3話 ここから先、人類はセンくんに頼れない。センくんは死んでしまったんだから。この世界にはもう、ヒーローはいない。
3話 ここから先、人類はセンくんに頼れない。センくんは死んでしまったんだから。この世界にはもう、ヒーローはいない。
『輝木&星桜が、イーにボコられている』……そんな残虐的なシーンを、ウルアと久剣の二人は、何もできずに黙って見ている事しか出来ない。センエースがどうなったのか、本当に死んだのか……とか、色々と考えるべきことはあったが、とりあえず、直近で最も大事なことは、このイー・ト・ラーをどうするべきか。
ウルアと久剣は、
星桜&輝木の邪魔にならないよう、
言葉を交わすことなく、
距離を取ろうとしたが、
そこで、イー・ト・ラーが距離を詰めてきて、
「貴様らには……なんの価値もないな」
そう言いながら、
ウルアと久剣を、殺そうとした……
ところで、
輝木が口から血を吐きつつ、ロケットみたいに飛んできて、
頭突きでイー・ト・ラーの腹部に突撃する。
衝撃を感じつつも、
しかし、それだけでしかない様子のイー・ト・ラーは、
輝木の頭を掴んで、
「邪魔」
グワァアングワァンヒューンと、
ハンマー投げの要領で、輝木の体を吹っ飛ばしていく。
そんなイー・ト・ラーの背部に、
星桜が忍び寄り、
魔法の剣で、イー・ト・ラーの首を切ろうとしたが、
ガキィンっと弾かれる。
手が痺れている様子の星桜に、
イー・ト・ラーは、
「貴様らの、今の、その行動に、何か意味があると本気で思うか? 無駄な抵抗をせず、黙って殺されるのがもっとも合理的だと、本当に分からないのか?」
と、とことん小バカにしながら、そう言って、
星桜の頭を掴み、地面にたたきつけた。
綺麗な顔がグシャリとつぶれる星桜。
即座に回復魔法をかけるものの、
イー・ト・ラーに、頭を、ぐいっと踏まれて、
また顔が潰される。
そんな、勝ち目が一ミリもない大惨事を見つめながら、
蝉原デスガンは、
「タナカ・イス・セラ……輝木トト詠……君たちは、別に弱くないんだけどねぇ。というか、普通に考えて、めちゃくちゃ強いんだけど、相手があまりに悪すぎるねぇ……」
そう言いながら、
フヨフヨと、
ウルアたちの近くまで飛んでいき、
「さて……輝木と田中は、闘っているけれど、君たちはどうする?」
その質問に対し、
久剣が、
「どうするもクソも……私たちでは、あの化け物をどうすることもできない……」
続けて、ウルアが、
「オーナー……蝉原さん……閃様は、今、どうなっているのですか? 本当に死んだわけではないはずですよね?」
「そう思いたい気持ちは分かるけれど、センくんは間違いなく死んだよ。灰になったふりをして奇襲を狙っているわけじゃない。センくんは死んだんだ。……だから、この場は君たちでどうにかするしかない。ここから先、人類はセンくんに頼れない。……改めて考えると、この状況、人類的に、だいぶ地獄だけど……でも、仕方ない。センくんは死んでしまったんだから。この世界にはもう、ヒーローはいない」
「……」
「今まで、君たちは、センくんがいて当たり前だと思っていた節があるよね。その奇跡は、決して当たり前ではないのに」




