37話 あまりにも深い絶望。さっきまで麻痺していた痛覚が、明瞭に復活したみたいに、体が壊れていくことの激痛をハッキリと感じる。
37話 あまりにも深い絶望。さっきまで麻痺していた痛覚が、明瞭に復活したみたいに、体が壊れていくことの激痛をハッキリと感じる。
恐怖と絶望が全身を包み込む。死を前にしたことで、レイナの意識の中から、『レイナ以外の部分』がじっとりと溶けていく。彼女の中から余計なものが完全に消えて、『神話生物関連で色々とごちゃごちゃする前』の、完全に元のレイナの意識に戻ると、
「なんで……あたしが……こんな目に……」
ただの恐怖を口にして、ぽろぽろと涙を流し始める。
ショデソウに騙されて携帯ドラゴンと一緒に呪いをぶちこまれて、
イーに乗っ取られて、シュブに奪われて、センに殴られて、
散々な目にあった今夜を嘆く。
絶望の中、
死の恐怖だけがハッキリとしたシルエットを帯びる。
あまりにも深い絶望……さっきまで麻痺していた痛覚が、明瞭に復活したみたいに、体が壊れていくことの激痛をハッキリと感じる。
「ああ……痛いぃい……痛いよぉ……く、苦しい……」
ばたばたと両手足を動かすが、それだけが精一杯。
視界は狭くなるのに、痛覚だけはどんどんハッキリしてくる。
全身を万力で粉々にされているみたいな……そんな痛みの中、
レイナは、
センに、
「た……たす……けて……」
救いを求めた。
必死になって、弱さを叫ぶ彼女を見て、
センの中で、
「……」
全部が沸騰する。
血走った眼球が、レイナの魂魄を捉えて離さない。
センエースの中にある小宇宙がまたたく。
限界を無視して、その向こうへと、這いずっていく。
可能性の光。
運命の閃光。
言葉の意味はよく分からんが……とにかく、センエースの全部が、
のきなみ、暴走気味に、沸騰しては炸裂する。
センは、レイナの死にゆく体を、そっと抱えると、
「心配しなくていい。誰も、お前を奪えない。……ここには、俺がいるから」
言葉が光になって、レイナを包み込む。
レイナの腐りかけた脳の中から、
あふれ出る、暖かな分泌。
恐怖と苦痛が霧散していく。
理由は分からない。
心が満たされていくという錯覚に溺れる。
センは、
「すまない。気持ち悪いかもしれないが……我慢してくれ。今から俺は……お前を捕食する」
「……」
だいぶキモいことを言われているのだけれど、
レイナは、一切、不快感を抱かなかった。
理由は知らない。
理由なんかない。
とにかく、レイナは、『無上の暖かさ』に包まれていた。
そんな中、
ヨグが、センに、
「それは、もっとも愚かな手だ、センエース。タナカ・イス・レイナの呪いごと、シュブを喰らい尽くすという手法……それをすれば、確実に死ぬ。『自分は何をしても死なない』という誤解は改めるべきだ。すでに、貴様の中は無数の重荷でパンパンになって――」
と、柄にも合わず、真っ当なことを口にするヨグに、
センは、
「死んだら、あとは星桜と輝木とレイナが頑張る。それだけの話だ。できれば、ウルアと久剣にも覚醒してもらって、マジカル美少女クインテットとして頑張ってほしいところだが、そこまでは望みすぎかな」




