35話 まず、焼香の順番が来たら、中腰の姿勢で正面へと進む。次に、焼香台の手前に座り、遺族に一礼。そして、祭壇上の遺影に向かって一礼。
35話 まず、焼香の順番が来たら、中腰の姿勢で正面へと進む。次に、焼香台の手前に座り、遺族に一礼。そして、祭壇上の遺影に向かって一礼。
「おいおい……どうした……まだ、一回殴っただけで、それ以外は何もできてねぇぞ……」
センの言う通り、現状では、まだ、センの拳が、レイナの胸部を砕いただけ。実力差とか、スペシャルの効果とかを考えると、それはそれで、すごいことなのは間違いないが……センの視点では、あくまでも『殴って砕いただけ』である。
神のカンスト領域に到っているレイナからしても、
『欠損治癒の魔法を使えば秒で回復する程度のダメージ』しか受けていないはず。
なのだが、しかし、今のレイナは、どう見ても、
『ちょっとダメージを受けただけ』には見えない。
えげつないほど、もだえ苦しんでいる。
「うぐっ、うぷっ、おえぇえええええええっっ!!」
ゲロの雨が止まらない。
流石にヤバいと思い、
センは、レイナの胸部から腕を引っこ抜き、
「欠損治癒ランク1000!!」
慌てて、レイナに回復魔法をかける。
このままだと死んでしまうと思ったから。
死ぬのは自分とアウターゴッドだけでいいと思っているから。
……しかし、どれだけ魔力を込めても、レイナの身体は一切再生してくれない。
むしろ、胸部の破損状況がどんどん悪くなっている。
まるで、魂ごと、全部が壊死していっているかのよう。
「おいおいおい、やばいやばいやばい、これ、マジで死ぬパターンだろ……」
その不安は、センだけのものではない。
レイナは、自分の中にある『全体』が死んでいることを、感覚で察知して、
「あたしの中の……無限転生Ⅲが……あたしを……殺しとる……」
本来であれば、彼女を無限に再生させる究極のスペシャル。
真・無限転生IIIノクターンスパイラル。
だが、レイナは、それこそが、今の自分を殺している中心であると認識する。
その認識が当たっているかどうかは、実のところ、レイナにも分からないが、そうとしか思えない雰囲気を、自分の中から強く激しく感じていた。
それを見ながら、センは、
「おいおいおい、やばいやばいやばい。ガチで死ぬ」
慌てた様子で、
どうにか、レイナから、『レイナを殺そうとしている何か』を、どうにかしようとするのだが、しかし、その方法が分からない。
センは彼女から『何かしら、奪い取ろう』と、彼女の深部にアクセスすべく、さっきから、色々試みてはいるのだが、ドン引きするほど、何もできないのだ。
レイナの全部が、まるで強固な金庫みたいで、
鍵をあけることも、箱を壊すこともできない。
焦ったセンは、
「ヨグ! 助けろ! なんでもいいから、どうすればいいか教えてくれ!」
その叫びに、ヨグが、
「まず、焼香の順番が来たら、中腰の姿勢で正面へと進む。次に、焼香台の手前に座り、遺族に一礼。そして、祭壇上の遺影に向かって一礼――」
と、『レイナの葬式での焼香マナー』について淡々と語りだしたので、
センはヨグを完全シカトして、
「蝉原ぁあ!!」
と、無二の大親友に救いを求めていく。




