34話 ちなみに俺は、現状を『弱者男性の怒りが、クソ生意気なメスガキに届いた奇跡』だと認識している。
34話 ちなみに俺は、現状を『弱者男性の怒りが、クソ生意気なメスガキに届いた奇跡』だと認識している。
「正直、俺も、何がどうなって、お前にダメージを与えられているのか理解してねぇ。さっきまでの攻防で、『俺じゃあ、お前にダメージを与えられないっぽい』ってのは、なんとなく理解していた」
挨拶のジャブ程度の攻撃しかしていないが、
それらが明らかにノーダメだったことは肌感で理解している。
「お前が言うように、お前より美形じゃないからダメージが通らないのか、それとも他の理屈か……その辺の詳細は知らんが、とにかく、俺じゃあ、お前にダメージを与えにくいのは理解していた。それにイラっとしたから、本気で殴った……そしたら、なんか、結構、ダメージを与えられた。……俺の視点だと、現状は、それだけの超展開さ」
実のところ、この奇跡の裏側には、
無数の『理屈』・『理論』・『実績』が積み重なっている。
数億年、数兆年……数垓年…
あるいは、それ以上の、無数の時間と思いが、
複雑に交差して、ひしめきあって、
結果、『今』という、レイナにとっては『理不尽な狂気』が出来上がった。
だが、そんなこと、知る由もないセンは、
この奇跡を起こした張本人でありながら、
ナニも理解しておらず、だから、呑気に、
「ちなみに俺は、現状を『弱者男性の怒りが、クソ生意気なメスガキに届いた奇跡』だと認識している」
などと、『運命論の奇跡』を『キモい解釈』で雑に処理していく。
なんという冒涜。
しかし、それでいい。
――センは続けて、
「レイナさんよぉ……この現実……お前の視点では、受け入れがたいかもしれんが、でも、俺は、お前の感想に興味がないんでねぇ。このまま、奪い取らせてもらうぜ……お前の中で渦巻く混沌を」
そう言いながら、
センは、レイナの中に根付く『シュブニグラスハート』を奪い取っておいしくいただこうとした……が、
その途中で、
レイナが、
「うぷっ……うぇええええええええええええええええええっっ!!」
白目をむいて吐き出した。
ゲロの雨を浴びながら、センは、
「あ? なんだ?! きっしょいなっ!」
レイナのゲロを払いのけながら、
レイナの顔面をにらみつけると、
白目をむいているだけではなく、
全体が真っ青になっていて、
そして、次第に、酸化した血みたいな、やばい感じの真っ黒になっていく。
さらには、彼女の苦しみが波及するように、
2000ほどいる異次元同一体も苦しみはじめ、
そして、『真夏のアスファルトに放り出された氷』みたいに、
すべての異次元同一体が、シュゥウっと、地面に溶けていってしまった。
「おいおい……どうした……まだ、一回殴っただけで、それ以外は何もできてねぇぞ……」
センの言う通り、現状では、まだ、
センの拳が、レイナの胸部を砕いただけ。
実力差とか、スペシャルの効果とかを考えると、それはそれで、すごいことなのは間違いないが……センの視点では、あくまでも『殴って砕いただけ』である。




