26話 まあ、間違ってはいない感想だけれど、俺的には、『君が言うな』と言いたいけどね。
26話 まあ、間違ってはいない感想だけれど、俺的には、『君が言うな』と言いたいけどね。
「う、ぐうう……ううううぃいいいいっ!」
揺さぶられていく。すべて。心が形になって、心臓を追い越していく。全てを躍動させるポンプ。命が膨らんでいく。臓の深部で、小さな光が、コツコツと燃える。
「……シュブ……ニグラス……ハート……」
しぼりだすように、口から吐き出した言葉。
言葉は形になっていく。
レイナの口から、
『歪で真っ黒な心臓』が吐き出された。
そのキモい心臓をつかみ取ったレイナは、
一切の躊躇なく、グシャリと握りつぶす。
その光景を見ていたセンは、眉間にしわをよせ、
「キモいな、あのメスガキ……黒い心臓を吐き出して、握りつぶしたぞ。アタマおかしい」
その言葉に、蝉原デスガンが、
「……まあ、間違ってはいない感想だけれど、俺的には、『君が言うな』と言いたいけどね」
などという、まったりとした対話の向こうで、
レイナは、
「キェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!」
と、盛大な爆音で自分の全部を叫んでいた。
その叫びに呼応するように、
さきほど潰された黒い心臓がグニャグニャと形を変えて、
『豊穣』を想起させるゴージャスな『黒い盾』へと変貌していく。
黒い盾を装備したレイナは、
「はぁ……はぁ……」
荒い息を、無理やり整えてから、
ギっとセンを睨み、
「セン……エース……」
改めて、センの名前を口にする。
言葉が色とりどりの霊体になったみたいに、
スゥっと、レイナの全身にしみ込んでくる。
レイナの全てが沸騰していく。
脳が、何かに、浸食されていく。
沸騰したぶんだけ、意識が遠くなっていく。
感情が溶けていく。
何かを失っていく。
その分だけ、何かを手に入れる。
何がなんだか分からない衝動の果てに、
「私は、タナカ・イス・レイナ=シュブニグラスハート。……センエースを殺す者だ」
レイナの中にあるレイナとしての全部がそぎ落とされた。
それでも、タナカ・イス・レイナを名乗る奇抜。
レイナの目から光が消える。
『闇落ちした』ということが、子供向けアニメの過剰演出ぐらいよくわかった。
黒い盾を携えたレイナは、
そのまま、
「約束神化」
サクっと、強大な力を発揮しつつ、
さらに、
「殺戮神化」
神化を容易くダブルで積んでいく。
前提がどうあれ、ダブルは運用が難しいはずなのだが、
そんなことはどうでもいいとばかりに、
軽やかに天に舞うと、
レイナは、天を仰ぎ、
「プラチナ……スペシャル……」
ほとんど強制的に、自力で、自分の可能性を切り開いていく。
彼女の中で目覚めた可能性、
それは、『サンスクリットアライブ』。
一言で言えば『愛の奇跡』を現実にする力。
愛の奇跡で、不可能を可能にしていくチート。
レイナは、
「殺意も愛だろう?」
と、自分自身に言い聞かせて、
本来であれば、美しいはずの奇跡を、
手前勝手な理屈で黒く塗り替えていく。




