23話 感じるぞ。タナカ・イス・レイナ……貴様の中にある、あの男――『センエース』への嫌悪感。私は貴様の力になれる。私をうけいれろ。私を使い……あの男を殺せ
23話 感じるぞ。タナカ・イス・レイナ……貴様の中にある、あの男――『センエース』への嫌悪感。私は貴様の力になれる。私をうけいれろ。私を使い……あの男を殺せ。
「……てめぇら、よってたかって……くそ……ど、どんだけ魔力を込めやがったんだ……ぐぬぬぬぬぅ、ぃいいいいいい!」
レイナと違い、センには下地があるので、
何もできないというわけではなかった。
全力で力を込めれば、イー・ト・ラーの身体がビキビキと音をたてて痙攣していく。
あと数秒もあれば砕けそう……というところで、
――レイナの頭に声が響いた。
『感じるぞ。タナカ・イス・レイナ……貴様の中にある、あの男――【センエース】への嫌悪感。私は貴様の力になれる。私をうけいれろ。私を使い……あの男を殺せ』
脳内をザラザラと触られて、意識がボーっとするレイナ。
抵抗する気を根こそぎ奪われたみたいに、
レイナは、いっさい迷わず、イー・ト・ラーに身をゆだねた。
『それでいい。タナカ・イス・レイナ……私は貴様のために、貴様は私のために……貴様は今日から……私のCPUだ』
ガギンッッ!!
と、シャッターでも降りたみたいに、
レイナの心がガツンと閉じた。
そして、表層の心を、
イー・ト・ラーが包み込んでいく。
ゆっくりと、しかし、一瞬で、
イー・ト・ラーとレイナが一つになっていく。
そして、発光。
レイナの身体がごうごうと強く輝く。
その光に触れたと同時、センは、自分を拘束していたイー・ト・ラーをバキィっと破壊することに成功した。
しかし、センもアホではないので、イー・ト・ラーを殺せたとは思っていない。
自分を拘束していたイー・ト・ラーは、ただの人形。
本体は……今、レイナと一つになっている。
レイナは、
「ぶはぁ……」
と、一度、深く息を吸うと、
バキィ!!
と、あっさり、ギャラク〇ィカドーナツを破壊して、
自由になると同時、
ギュンッ!!
と、一瞬で、トルネンプラとの距離を詰めて、
トルネンプラの首を掴むと、
そのまま、
グロテスクに、頭から、バキバキ、ボリボリ、ぐちゃぐちゃと、
トルネンプラの踊り食いを始めた。
ほぼ一瞬で、トルネンプラを捕食してしまったレイナは、
パチンと優雅に指を鳴らした。
すると、50~60体いるトルネンプラの眷属たちが、
ヒュンヒュンと、レイナの身体の中に納まっていく。
オーラと魔力で満たされたレイナは、
天を仰ぎ、
「すぅ……はぁ……」
と、深く深呼吸をしてから、
スっと視線をおろし、センを睨むと、
「喜べ、センエース。あんたは、あたしの手で殺される。これほど名誉なことはない」
暴走する万能感の中で、そんなことを言うレイナ。
センは、
「すげぇな、お前……今のお前からは『ミゼーアを置き去りにするレベルの、とんでもない圧力』を感じるんだが……」
マジで辛そうな顔でそう言うセン。
センは、続けて、
「俺を殺すだけなら別にいいんだけどよぉ……お前が、その後で、どうするつもりか聞いていい?」
「この世の全てを破壊する。こんな世界はもういらん」




