19話 ミゼーアより弱いが、それは相対的な話であって、普通の視点では、エグすぎる脅威。なんで、こんなカンスト級の怪物がポンポン、ポンポン、次から次へと……
19話 ミゼーアより弱いが、それは相対的な話であって、普通の視点では、エグすぎる脅威。なんで、こんなカンスト級の怪物がポンポン、ポンポン、次から次へと……
「なんで苦しんでねん! 嗚咽したいんは、どう考えても、こっちやろ! 首しめられて、ゲロかけられてよぉ! おどれ、ほんま、あたしにたいする、特殊な嫌がらせに余念がなさすぎるやろ!」
あくまでも、全てが、『センの嫌がらせ』だと認識しているレイナ。これに関しては、レイナに落ち度はまったくない。
――センは、さらに、何度か嘔吐して、
「はぁ……はぁ……」
気を抜けば意識を失いそうな極限状態に陥りつつも、
どうにか、自分の中に押し込んだ呪いの『受け入れ処理』に勤しむ。
そんなセンを尻目に、
蝉原デスガンが、心の中で、
(さあ、センくん。ワルツの時間だ)
そうつぶやいた直後のこと。
先ほど、レイナが捨てたムーンビーストの首が、
バチバチバチィっと、爆竹みたいに破裂して、
そのかけらが、天地逆転した雨みたいに、空へ落ちていく。
その流れの中で、
ギニギニィ!
と、不快な音が、響き渡った。
反射的に、センは顔をあげて、音の発信源である天を見上げると、
そこには、時空の裂け目が出来ており、そこから、
「ぴーぴーぴー」
『音の擬人化みたいな怪物』――『アウターゴッド、トルネンプラ』が這い出てきて、
なんの脈絡もなく、奇怪な音で、
「ぴーぴーぴぴぴーぴぴぴ、ぴぴぴ。ぴーぴーぴぴぴーぴぴぴ、ぴぴぴ。」
と、狂気的な歌を歌い始めた。
すると、センの身体がズシっと重くなった。
明確にオーラや魔力が扱いづらくなる。
(?! この歌……もしかして、デバフをバラまいている感じか?!)
センの予想は的中。
トルネンプラは、歌声で攻撃やデバフを押し付けてくる厄介なタイプ。
それだけではなく、さらに、歌に合わせて、周囲に無数のジオメトリが出現し、そこから、大量の眷属が召喚される。
その数、だいたい、50~60体。
その一連の流れを見ながら、センは、
(……今は、レイナの呪いと向き合うだけで精一杯だってのに……まったく、厄介な仕事ばっかり増やしやがって……)
しんどそうに溜息をつきつつも、
召喚された大量の眷属に意識を向ける。
どう動きだしても対応できるよう武を構えて、
『トルネンプラと、その眷属たち』を、
キっと強い目でにらみつける。
(あの歌ってる怪物……圧力的には、ミゼーアより弱いが、数値的には同じぐらいっぽいな……そして、眷属も……似たような力を持っている。全体的にミゼーアより弱いが……それは相対的な話であって、普通の視点では、エグすぎる脅威。……なんで、こんなカンスト級の怪物がポンポン、ポンポン、次から次へと……ふざけやがって……)
センが心の中で、そう吐き捨てていると、
トルネンプラの眷属たちが、
「「「「「ギギャギャギャギャギャ!」」」」」
と、喚き散らしながら、
一斉に襲い掛かってきた。
センだけを狙っているのではなく、
ここにいる人間すべてを処理しようとする波状攻撃。




