17話 シンプルな制約。だからこそ強固。数学の問題みたいなもの。問題の文字数が少ないほど、実は難易度が高い。
17話 シンプルな制約。だからこそ強固。数学の問題みたいなもの。問題の文字数が少ないほど、実は難易度が高い。
「女子中学生を強制的に拘束するとか、ほんまに終わっとる変態やな、ジブン」
決して屈しないというプライドを見せてくる彼女に、
センは、
「まさか、俺を、『この程度で完結する変態』だと思っていないだろうな? お前の地獄は、ここから始まる。世紀の凌辱ショーを、ぜひ、最後まで堪能してくれ」
などと、一ミリも中身がない言葉を口にしつつ、
レイナの首を両手でソっと握りしめる。
そして、オーラと魔力を駆使して、
レイナの奥へと潜入していき、
呪いのコアを探していく。
イメージ的にはケーブルを繋いで直接ハッキングしていく感じ。
これまで、輝木や星桜相手にやってきたことなので、ある程度はこの作業に慣れてきている。
(見つけた……レイナにかけられている呪い。呪いの内容は、レイナが言った通り。携帯ドラゴンを受け取る代わりに、センエースを殺せ――できなければ死亡。シンプルな制約。だからこそ強固。数学の問題みたいなもの。問題の文字数が少ないほど、実は難易度が高い)
「さわるな……変態」
キレたナイフのような目で、自分の首をしめているセンを睨んでいるレイナ。
そんなレイナに、センは、
「いい声で鳴くメスブタだ。貴様の顔が恥辱と苦痛で歪んでいくことを想像するだけで股間が膨れてしまうよ」
などと、好き放題なことを言いつつ、
脳内では、必死に、
(……この呪い……奪い取るだけなら、まあ、出来そうかな。……問題は俺の中で処理できるかどうか。下手をしたら食い破られる。俺が死ぬ確率……結構、高いな……)
『爆弾処理』や『ガンの摘出手術』なんかをしているみたいに、
慎重に、けど、無駄な時間をかけないよう時には大胆に、
心を極限まで張り詰めて、レイナから、呪いを回収しようとするセン。
脳の動きに連動して、
レイナの首をしめている手がうにょうにょと動く。
その動きに対して、激しい嫌悪感をしめしたレイナは、
「触るないうとるやろ、変態、ごらぁあああ! 離せ離せ離せ、殺すぞぉおお! 糞レイプ魔ぁあああ!!」
「にゃんぱすー」
と、脊髄反射で、何の意味もない返しをしていくセン。
意識の全てを、呪いの回収に注いでいるので、瀟洒な返しをする余裕がない。
……まあ、ある意味で、もっとも瀟洒な返しになっているとも言えるが。
(よし……回収できた。……あとは、レイナのもとに戻らないよう、俺の中に閉じ込めて、抑え込む。そして、『俺が死ななければ呪い発動』という部分を別の縛りに書き換えていく……)
繊細な作業をしていると、
そこで、センが、
「うぷっ……」
真っ青な顔で、口をパンパンにふくらませた。
腹の底からこみあげてきた吐き気。
センは、たまらず、レイナの首から両手をはなし、
「オロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロ!」
と、地面に向かって盛大なゲロをはく。
地面に吐かれたゲロが飛び散って、レイナの足にかかると、
レイナは、嫌悪感のあまり悲鳴をあげて、
「きっしょいなあああああ、くそがぁあああ!」




