1話 私と結婚できるってなったら、普通は承諾するでしょ? あ、でも、閃くんは普通じゃないから、承諾しない可能性もあるのかっ。
1話 私と結婚できるってなったら、普通は承諾するでしょ? あ、でも、閃くんは普通じゃないから、承諾しない可能性もあるのかっ。
「てか、アザさんよぉ……一応、お前にも聞いておくけど……お前、昨日……ってか、ここ数日、休んでた? それとも、普通に登校してた?」
「え? 休んでないよ。皆勤ではないけど、その勢いだよ。今日も閃くんラブのアザトスちゃんだよ。結婚しよっ」
「マジか……」
「ねぇ、閃くん。結婚しようよぉ。ありがとっ。で、子供は何人ほしい?」
「今のセリフの中に、ミドルネームみたいに挟まっていた『ありがとっ』ってのは、俺が承諾したと思い込んだことに対するありがとうか? だとしたら、震えるぜ。お前の概念全てが畏怖に値すると言っても過言ではない勢いで」
「だって、私だよ? 私と結婚できるってなったら、普通は承諾するでしょ? あ、でも、閃くんは普通じゃないから、承諾しない可能性もあるのかっ。鬱っ。死にたいっ」
「情緒っ」
マジで、なんの生産性もない、
ゴミトークに花を咲かせている間に、
昼休みが終わってしまった。
★
センが屋上を後にしてからも、
アザトスは、屋上でたたずんでいた。
まるで、誰かを待っているみたいに。
……午後の授業が始まってからも、
しばらく、ぼんやりと外を眺めていたアザトス。
そんな彼女の背後に、
時空の亀裂が出来た。
そこから這い出てきたのは、
「やあ、アザトス・デザイア。ご機嫌いかが」
宇宙一のヤクザ。
蝉原勇吾。
蝉原は、
表情には笑顔を浮かべているものの、
しかし、体には、少々こわばりができている。
緊張を隠そうとしている雰囲気。
そんな蝉原の複雑な心境を見透かしているのか、見透かしていないのか、良くわからない『完全に無の表情』で、
デザイアは、
「私を、あのクラスから排除するとは、ずいぶんと思い切ったことをしたものだ。君は後先というものを、まったく考えないバカなのか?」
センと会話していた時とは別人のような、
とことん冷めた口調でそう言うと、
蝉原は、
「勘違いしないでほしいんだけど、君を排除したのは、俺じゃなくてショデヒだよ」
「……」
「嘘じゃないよ。……まあ、嘘ではないんだけど……ショデヒが排除したというのは、語弊がある言い方になるね。正確に言えば、『ショデヒの失態』のせいで、『君を排除してしまう』というバグが起きてしまった」
「……簡潔に話せ。このインターフェイスは、コスモゾーンの深部にアクセスできない。表層のログは確認しているが、舞台裏の事情は何も理解できていない」
『アカシックレコード(コスモゾーンの中に存在する情報統合ライブラリ)』には、この世界で起こった全ての情報が記録されている。
そのログは、複数の段階で管理されており、
レベル1なら『コスモゾーンにアクセスする』だけでも確認できるが、
レベル2、レベル3と、情報の濃度が濃くなるにつれて、『相応の権限』や『暗証キー』が必要になってくる。
――アザトスから簡潔な説明を求められた蝉原は、
頭を悩ませつつ、
「えっと……まず、一番の原因は、ショデヒが、バーチャルディメンションを使った際に、輝木の携帯ドラゴンを奪い取ったことなんだ」




