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52話 教え。


 52話 教え。



「おいおい、なに驚いた声だしてんだよ。何度も言ったはずだぜ? 俺は強すぎるって」


 そう言ってから、モンジンは、『ジャミの目程度では捉えられる訳がない、超越したブレイクダンス的な動き』で、ジャミの足をはらい、叩きつけるわけでもなく、優しく地面に転がした。


「っ!」


 仰向けに転がされて、気付けば空を見つめていたジャミ。

 自分の身に何が起こっているか、一から十までまったく理解できていないジャミが、深い困惑の底に沈んでいると、

 モンジンが、そんなジャミの顔を上から覗き込んできて、


「やれやれ、俺の前でお昼寝とは、豪胆なやっちゃなぁ。超神でも出来ないマネを平然とやってのける。そこに痺れる憧れる」


 などと、ふざけた事を言ってきた。



 ――そんなモンジンに、オーラの塊が飛びかかった。

 バロールが、横から、豪快な飛び蹴りをかましてきたのだ。


 凄まじい速度だったが、モンジンはヒョイっとなんなく避けた。


 その一連を受けて、バロールは、


(……なるほど……)


 理解する。

 と同時に、このガキに対する認識を180度一変させる。


「お前も第三勢力だったか……見事に騙されたよ。実に演技派だ」


「騙す? おかしな事を言う。俺がお前らに対し、何か、一つでも嘘をついたか?」


「……ふっ……」


 バロールは、鼻で笑いながら、ゆったりと構えつつ、


「定義にもよるな」


 ボソっとそう言ってから、モンジンに殴りかかった。

 最小の動きで、鋭く、速く。

 だが、モンジンの動きは、その一歩上にあった。

 最短の動きで、儚く、ゆるやかに。


 それを見て、バロールは、また、モンジンを理解する。


(尖った『回避タンク』タイプか……)


 この手のビルドは珍しくない。

 というか、カティがモロにそれ。


 そこで、ジャミが、参戦してきて、


(この少年、さばきはカティ級だが、火力はまったくない! 不利は無視して強引に押しこむぞ、バロール!)

(カティ級とは……随分な高評価をかっさらうガキじゃねぇか……第三勢力ってのは、まさか、本当に、ゼノリカに匹敵する力を持ってんのか?)

(さぁ、分からない。しかし、この少年を落とせなければ、『ゼノリカが、私達のせいで侮られることになる』という事だけは分かっている!)

(それだけは、絶対にゆるせねぇなぁ!)


 ジャミとバロールの二人がかりでモンジンを押し込もうとする。

 だが、


「二人で闘っているからといって、無理に、点と点を会わせなくてもいいんじゃないか?」


 モンジンは、いつまでも、どこまでも軽やかに、二人の攻撃をサバき続ける。

 なんなく、容易く、まるで幼児用のヌルゲーでもやっているかのように、


「オーラの流れに意識を傾けすぎだな。中級者にありがちのミスだ。たまには、目に映るものだけに注意を向けてみるのも悪くはない」


 モンジンの動きは、常にフラットというか、

 微妙に『脅威ではない』というレベルで一貫している。


「こだわりは大事だが、とらわれたら本末転倒……という観念にも、気付けばとらわれちゃっていたりするから、魂の指向性ってのは、本当に厄介だよね♪」


 回避タンクとしての性能は見事だが、火力はまったくなく、

 特殊な受け攻めもなく、ずっと素直に一直線のままで、


「力とは、ぞうしょうにするため、技とは、りゅうとするため。では、心とは、何を何にするため?」


 なのに、届かない。

 なぜか、届かない。


(かみあわない。すべてが……なんでだっ)

(残り10分……まずい、焦りのせいか、一手一手が雑になっている……このままでは……)



「焦りは伝染する。不運は感染する。ノイズは気付きを殺していく。さあ、そのスパイラルから、抜けだせるかな、ボウヤたち」




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自作コミカライズ版35話公開中!ここから飛べます。 『センエース日本編』 また「センエースwiki」というサイトが公開されております。 そのサイトを使えば、分からない単語や概念があれば、すぐに調べられると思います。 「~ってなんだっけ?」と思った時は、ぜひ、ご利用ください(*´▽`*) センエースの熱心な読者様である燕さんが描いてくれた漫画『ゼノ・セレナーデ』はこっちから
― 新着の感想 ―
[良い点] 「力とは、蔵を象にするため、技とは、流を疏とするため。では、心とは、何を何にするため?」 力とはの部分は紙野さんとの繋がりですね。 紙野創蔵の蔵を形にするための像。超神H章最終話、I章0…
[気になる点] 「こだわりは大事だが、とらわれたら本末転倒……という観念にも、気付けばとらわれちゃっていたりするから、魂の指向性ってのは、本当に厄介だよね♪」 この部分、今のザンクさんの『自由であろ…
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