9話 てめぇと比べたら、万倍マシなクマが、安全のためにバンバン殺されているって現実があるのに、なんでクマより遥かにやばいてめぇが許されるなんてことがある?
9話 てめぇと比べたら、万倍マシなクマが、安全のためにバンバン殺されているって現実があるのに、なんでクマより遥かにやばいてめぇが許されるなんてことがある?
「だから、見逃してくれって? そいつは聞けない話だぜ、ミゼーア」
「ど、どうして――」
「今の俺からすれば、お前は雑魚だが、俺以外の人類にとってはそうじゃねぇ。お前は危険な存在で、既に、一度、人類に対して牙をむいている。こいつは、ごめんなさいで済むことじゃねぇ。例えるなら……『熊の駆除』みたいなもんだ。……『銃をもっている戦闘力5のオッサン』からすれば、クマは、『殺せる範囲の敵』だが、『一般人』にとってはそうじゃねぇ。だから、『銃を持っている戦闘力5のオッサン』が、責任をもって、クマを撃ち殺さないといけないんだ」
「私はクマとは違う。対話ができる」
「んなもん関係ねぇよ。てめぇが最初から対話でコトを進めていたら、また話も変わっていたが、てめぇは、初手から俺らを殺そうとしただろ。生きることに必死なだけのクマよりも、テメェの方が、タチとしては万倍悪ぃ」
「……」
「てめぇと比べたら、万倍マシなクマが、安全のためにバンバン殺されているって現実があるのに、なんでクマより遥かにやばいてめぇが許されるなんてことがある? 人間の安全に対する配慮をナメんな。俺は、動物愛護の精神を持つ聖人じゃねぇんだよ」
センは、『熊さんが可哀そうだから殺すな』なんてことは口が裂けても言わない。
自分がクマに殺されそうになっているさなかに『それでも熊を殺すべきではない』という持論が揺るがない奴の話には耳を傾けるべき……とは思っているが、
『安全圏から勝手なことをほざくだけの奴』のことは、殺人幇助の罪人と同じだと考えている。
だから、センは、ミゼーアを許さない。
基本的にセンは、『人類が対応しきれないヤバイ害獣』が相手の場合、心を鬼にして、『銃をもったオッサン』の役目を果たそうとする。
ただ、
「センエース……あなたの配下になる。あなたに忠誠をつくし、あなたの監視下のもと、あなたの命令に従う……だから、どうか……命だけは……」
こう来られてしまうと、
センエースの中のセンエース的な部分が、どうしても揺らいでしまう。
徹底的に『ただのバカなクズ』でいてくれれば、
問答無用でぶっ殺せるのだが、
こう来られてしまうと、
「……ちっ……」
舌打ちが出てしまうセン。
どうしたものか……と、ふんだんに悩んでいると、
そこで、
「ん?」
ミゼーアの身体がビシっと固まって、
そして、そのままシュンっと消えてしまった。
センは、
「逃がすかぁ!」
ミゼーアを回収しようと動き出すが、
しかし、
「なっ……どこ行った?!」
一瞬で、『今のセン』の索敵範囲外に消えてしまったミゼーア。
「んなアホな……俺は、一瞬たりとも、気を抜かなかったのに……」
ミゼーアの命乞いに、どうするべきかと頭を使いはしたものの、
監視の目に関しては、ずっとギラつかせたままで、コンマ数秒たりともスキは与えていなかった。




