7話 ガムシャラに、必死に、一秒一秒をかみしめながら、バカみたいに、もがき、あがき、苦しみ続けた。で、俺が産まれたってわけ。
7話 ガムシャラに、必死に、一秒一秒をかみしめながら、バカみたいに、もがき、あがき、苦しみ続けた。で、俺が産まれたってわけ。
『いや、センエースさん……流石に、それは厳しくないですか? アウターゴッドの頂点であるヨグ=ソトースと200億年殺し合い続けて生きのこった……ってのは、さすがに、フカシが過ぎません? だって、どう考えても無理ですし……』
――といった具合に沸き上がる、
『この場にいる全員の疑問符』に対して、
センは、
「常識を語るのはその辺にしておけ。俺に理屈は通じねぇ。俺が生き延びたって事実に、小難しい理由なんざ皆無。データなんかねぇよ。ガムシャラに、必死に、一秒一秒をかみしめながら、バカみたいに、もがき、あがき、苦しみ続けた。で、俺が産まれたってわけ。以上だ」
『積み重ねてきた者』にしか口に出来ない言葉を並べてみせた。
常軌を逸した猟奇的かつ狂気的な努力の結晶。
……そこに『常識的な理解』を当てはめようとすることがナンセンスの極み。
理解できないなら、黙って見てろ。
度肝を抜いてやる。
突き詰めた人間の異常さを思い知れ。
「ミゼーア……お前の強さが、今の俺にはよくわかる。200億年前の俺では理解できなかった厚みがデジタルに理解できる。お前は強ぇ。すさまじい強さだ。……おかげで飛べる。壁があって、始めて、超えるための努力が出来る。壁がなくても、必要とあらばできるかもしれねぇが……心の難易度が跳ね上がる」
そう言いながら、グンっと自分の奥にある厚みを底上げしていく。
ほんの数秒前までとは次元の違う輝き。
その神々しさを目の当りにしたことで、
ミゼーアは理解した。
(センエースの言葉がどこまで本当かは分からないが……強さは本物っ。まずい……死ぬ……っ)
センエースの全てを理解することはできないが、
自分の死期に関しては、陰影まで、ハッキリくっきりと見えた。
だから、暴走させる。
自分の全部。
沸騰させて、乗り越えるしか、生きながらえる術がないという、本能の悲鳴。
「うぉおおおおおおおおおおおおおっ!!」
格好つける余裕もなく、
ただただ全力で自分を暴走させて、
センエースを殺そうと飛び出した。
そんなミゼーアの速攻に対し、
センは、しみじみと、
「いい動きだぜ、ミゼーア。お前の戦闘力は、ヨグと大差ねぇ。間違いなく、アウターゴッドの上澄み中の上澄み」
そう言いながら、センは、紙一重で、ミゼーアの速攻を回避して、
その体軸の勢いそのままに、
「深淵閃風」
グニャリと、理解できない角度で体を反転させて、
ミゼーアの足を払い飛ばす。
音もなく、超高速で、『体勢を崩したミゼーアの顔面』に向けた右の拳。
置き去りにしてきた音達と重なるように、
「閃拳」
ズパァアアアン!!
と、ミゼーアの顔面に
美しい一手。
伝導率が常識を殺していく。
人間に出来る限界など、はるか彼方に吹っ飛ばしていく狂気の軌跡。
コンマ数秒の激しい衝撃の中で、
ミゼーアは思い知る。




