5話 センくんの全てを読み切ることは不可能だが……しかし、常に『最悪の斜め上』を想定して準備していれば、慌てずに対応することができる。
本日の2話目です。
5話 センくんの全てを読み切ることは不可能だが……しかし、常に『最悪の斜め上』を想定して準備していれば、慌てずに対応することができる。
「……ま、まあ、そうだが……というか、そもそも、センエースは生きているのか? ソウルゲートで200億年を過ごしたんだろう? 人間の精神で耐えられる時間ではない。なぜ、灰になっていない?」
「200億年の修行なんて、センくんからすれば、一般人視点における『2時間の座禅』ぐらいのものだよ。ダルいし、足がしびれるだろうけど、死ぬほどじゃない」
「……」
「センくんの全てを読み切ることは不可能だが……しかし、常に『最悪の斜め上』を想定して準備していれば、慌てずに対応することができる。心構えが出来ているか否かは雲泥の差」
「……」
「ショデヒ、君が今、相手をしているのは、そういう怪物だ。『ソウルゲートで耐えきれずに灰になった、やったー』なんて言っていたら、後ろから刺されておしまいだよ。ソウルゲートの負荷ごときで死ぬとか……そんなわけないんだから」
「……っ」
★
「――それだけ、無様に徹底して現実逃避できるというのも、一種の才能と言えるかもしれないね。私なら、そこまで醜くはなれない」
ミゼーアは、ため息交じりにそう言ってから、
「さて……では、そろそろ死のうか」
そう言いながら、右手にオーラをためていく。
ギュンギュンにオーラと魔力を高めてから、
「まとめて、消えてなくなれ。異次元砲」
巨大な異次元砲が星桜たちを吹っ飛ばそうと迫ってくる。
明確な死が目の前で輝く。
恐怖とか絶望とか、
その辺諸々の感情が一気に膨れ上がる。
そんな、極限状態の中、
時空の裂け目から、一人の男が這い出てきて、
「ドリームオーラ・オメガバスティオン」
当たり前のように……
――まるで、道端のゴミでも拾うように、
サクっと、ミゼーアの異次元砲をかき消してみせたセン。
センは、『ミゼーアのとんでもない異次元砲をかき消す』という人類史上最高クラスの偉業を成し遂げていながら、しかし、そんなことは心底どうでもよさそうな、苦々しい顔で、頭をぼりぼりとかきつつ、一人で、ボソボソと、
「くっそぉ! あれだけ綿密に計画を立てたから、確実に、ショデソウのアジトを見つけられると思ったのに……なんで、あんなに、いっぱい、ダミーがあるんだよ……ダミーなんて、普通、一個か二個……多く見積もっても10個とかが関の山のはずだろ? なんか、体感、無限ぐらいあったんだけど……あの中から正解のコントロールルームを探しだすとか、普通に心折れるわっ」
『それをしなければ世界が終わる』という前提があれば、センの心が折れることはないだろうが、別に、現段階だと、『ショデソウをどうしても殺さないといけない絶対的な理由』とかはないので、そういう時に『無限の根性』が発動することはない。
なんでもかんでも、常にスーパーメンタルというわけではないのだ。
「はぁ……まったく……」
と、しんどそうに溜息をつきつつ、
センは、首肩をゴキゴキっと鳴らして、
ミゼーアに視線を向ける。




