4話 事前に対策を打っておいてよかった。初手で爆撃されていれば終わっていたけれど……運命は、まだ俺を見放していない。
今日は遅くなるかもしれないので、朝に2話投稿します。
本日の1話目です。
4話 事前に対策を打っておいてよかった。初手で爆撃されていれば終わっていたけれど……運命は、まだ俺を見放していない。
「どうした、蝉原。厄介なセンエースが死んだというのに、なぜ、そんな不満そうな顔をしている? もしかして、なんだかんだ、貴様は、センエースのことを気に入っていたのか? だから、死んで悲しいのか? くくく……貴様も、所詮は、脆弱な心を持った元人間ということなのかな?」
そんなショデヒの言葉に一切関心を示すことなく、
蝉原は、警戒心全開で『認知の領域外全般』に意識を拡散させていく。
その結果、
「……38か所ほど、同時に爆撃されたか……」
「ん? 何を言っている? 蝉原勇吾」
「デコイとして設置してあったダミーのコントロールルームが38ヶ所ほど破壊された……」
「……ぇ……」
「もう、センくんの場所は特定できたから、余裕で逃げられるけどね。俺たちがいる、この『本物のコントロールルーム』は、いつでも自由に『ダミーコントロールルームと座標を交代できるシステム』になっているから、敵のポイントさえ把握できれば、容易に距離をとれる。センくんが、俺たちの座標を捕まえるのは不可能。なんせ、『こっちだけ瞬間移動とGPSが使える鬼ごっこ』みたいなものだからね」
鬼の居場所は、常に丸裸。
その上、自由自在に居場所を変えられる。
……この状況で、鬼にタッチされることはありえない。
「……こんな時のために、事前に対策を打っておいてよかった。初手で爆撃されていれば終わっていたけれど……運命は、まだ俺を見放していない」
「なにを言っている? いったい、何がどうなって――」
「普通なら200億年もソウルゲートをつかえば間違いなく灰になる。常識的な限界は1万年。……その事実を、ソウルゲート内でヨグから聞かされたセンくんは、『その常識を逆手にとれば、こちら側に奇襲をしかけられる』……と思ったんだろうね。灰になるフリという目くらましで油断を誘う……本来であれば、極めて有効な一手だ」
「……」
「けど、残念。センくん……俺は、君が、200億年程度で死ぬはずがないと思っているし、君ならば、どこかのタイミングで、急速かつ激烈に強くなって、こちら側に奇襲をしかけてくるだろうことも予想してあった。だから、認知の領域外のあちこちに、全部で500万ヶ所以上のダミーコントロールルームを設置してある。運が悪ければ、見つけられてしまうだろうけれど、君の運で、500万分の1を突破することはできない」
「……い、いつの間に、そんな……」
「そこは別に重要ではないだろう、ショデヒ。俺の用意周到ぶりなんかよりも、センくんのヤバさの方が、対応すべき大問題。そうだろう?」
「……ま、まあ、そうだが……というか、そもそも、センエースは生きているのか? ソウルゲートで200億年を過ごしたんだろう? 人間の精神で耐えられる時間ではない。なぜ、灰になっていない?」
「200億年の修行なんて、センくんからすれば、一般人視点における『2時間の座禅』ぐらいのものだよ。ダルいし、足がしびれるだろうけど、死ぬほどじゃない」




