3話 それだけ、無様に徹底して現実逃避できるというのも、一種の才能と言えるかもしれないね。私なら、そこまで醜くはなれない。
3話 それだけ、無様に徹底して現実逃避できるというのも、一種の才能と言えるかもしれないね。私なら、そこまで醜くはなれない。
「センエースは確実に死んでいる。その証拠が、あの灰。君たちのヒーローが死んだという現実を受け入れがたいのは分かるが、目の前で起きたことぐらいは受け止めてほしいものだね」
そう言いながら、ミゼーアは、星桜の顔面に、綺麗な裏拳を叩き込む。バキィっと頬を殴られた星桜は、豪快に吹っ飛び、ズサァアっと地面に倒れこむ。
痛む頬を押さえながら、
よろけつつ、
なんとか立ち上がった星桜は、
「……明らかめちゃくちゃ、手ぇ抜かれとるのに、このザマっすかぁ……これは、確かに、絶対に勝てんっすねぇ……いくらなんでも強すぎ……」
回復魔法で、顔面の大ケガを治療しつつ、
「閃壱番がホンマに死んどったら……ここで完全に終わりっすね」
と、そう言ってから、
星桜は、空に向かって、
「センセー、もう、『死んだマネ』はお腹いっぱいっすから、そろそろ帰ってきて、あの化け物を吹っ飛ばして欲しいんすけどぉ!」
などと叫ぶ彼女に続き、
輝木も、
「センイチバン……どうせ死んでいないのは分かっているので、星桜サンの言う通り、さっさと戻ってきてほしいんですどぉ……このままですと、私たち、本当に死んでしまって、あなたにお礼の一つも言えなくなってしまいますのでぇ」
などと、サイコな発言を連発する二人のメンヘラを尻目に、
ミゼーアは、しんどそうな顔で、
「それだけ、無様に徹底して現実逃避できるというのも、一種の才能と言えるかもしれないね。私なら、そこまで醜くはなれない」
ため息交じりにそう言ってから、
「さて……では、そろそろ死のうか」
そう言いながら、右手にオーラをためていく。
巨大な異次元砲で、全員まとめて吹っ飛ばそうとしている様子。
★
――認知の領域外で、
でかいエアウィンドウに表示されている『センエースの灰』を観察している、
『蝉原勇吾』と『ショデヒ』の二人。
風に吹かれて消えていっている真っ白な灰を見つめながら、
ショデヒが、ボソっと、
「……は、はは……はははっ。死んだぞ……これは、面白いな。あれだけカッコつけておいて、あっさり灰になってしまった! さ、流石に笑ってしまう! よく、ミゼーアは笑わずに堪えることができているな。くっ……はははっ!」
と、大笑いしているショデヒの横で、
蝉原は、怪訝な顔で、神経を研ぎ澄ましていた。
そんな蝉原に、ショデヒが、
「どうした、蝉原。厄介なセンエースが死んだというのに、なぜ、そんな不満そうな顔をしている? もしかして、なんだかんだ、貴様は、センエースのことを気に入っていたのか? だから、死んで悲しいのか? くくく……貴様も、所詮は、脆弱な心を持った元人間ということなのかな?」
などと、軽やかな言葉で、蝉原を侮辱していく。
そんなショデヒの言葉に一切関心を示すことなく、
蝉原は、警戒心全開で『認知の領域外全般』に意識を拡散させていく。




