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63話 ウチの弟はバカすぎる。死ねばいいのに……ああ、死んだのか。

 63話



「しかし、負けるとはなぁ……」


 そこで、一人の侯爵ヒゲモジャが、頭をかかえて深い溜息をつき、


「昨今における、あのバカの力は異常な領域にあったはず。……アレが、負けるかね……」


「わたしも、正直、驚きのあまり、先ほどから動悸が止まらないわ……」


「死んでくれて、どこかホっとしている……と、かつて、『戦場の乱鬼』と恐れられたこの私が、そんな事を思ってしまうほどの異常性が、あのバカにはあった」


「あのバカ以上の力を持つリッチ……ゾっとする……」


「ラムドの件はあとだ。最悪、ラムドが邪悪なる波動に目覚め、暴れだしたとしても、その時は、『フーマー』が動くだろう。問題はないさ。……それよりも、魔王国への『国としての対応』が問題になってくる。あのバカの奇行について、あくまでも、我々は何も知らないという証拠を、すぐに固める必要が――」




 そこで、第一王女が、




「問題ないわ、ソロウ侯。あのクソバカは、事実、自分の意志で、魔王城に乗り込んでいるのだから」


「しかしですなぁ、サーナ王女――」


「ええ、確かに誘導はしたわ。わたしたちが、常に、『我々の祖国が、なぜ、醜い魔物の国より下なのか』と、憤慨していたのは事実だし、あのクソバカと『唯一まともな会話』ができた『フーマーの黒龍騎士』に、『いくつか依頼』をしたのも事実。けど、あのクソバカは、我々に誘導されていると理解した上で、行動を起こした。もともと、行きたかったのでしょうね。常日頃から、サリエリがムカつくとか何とか言っていたし。……むしろ、我々が、あのクソバカに踊らされたのよ」


「さ、流石に、そんな訳……」


「そういうバカなのよ、アレは。……言っておくけれど、わたしが、あのクソバカに勝てなかったジャンルは剣や魔法だけじゃないわ。医学も法学も物理学も算術も(バケ)学も、すべてにおいて他者を遥かに凌駕した本物の天才。――それが、ウチの弟、世界最強の勇者なのよ」


 治療系の魔法は、不思議な事に、医学の知識量で効果が変化する。


 たとえば、首の骨についての知識で、頸骨の中で棘突起が最も突出しているのが第七頸椎であると理解しているだけでも、回復量が0・01%も上昇する。


 人体の構造や、治療方法について詳しければ詳しいほど、回復量は増大する。


 その事実は、この世界では常識。

 ゆえに、当然その事を知っているハルスは、自身の回復魔法を強化するため、

 世界最高の医学者が教授を務めている『フーマー大学園』に進んだのだ。


「……三年前、あのバカは、『バカすぎる』と、大学園を半年で追い出されたけど、定期試験の結果は、全て、座学ふくめて、歴代最高の結果だったのよ? 『剣や魔法が優れているのは知っていたが、まさか、それに加えて、あれほどの天才だったとは思わなかった』と学園長が絶賛していたわ」


 『ですが、流石に、あまりにも素行が悪すぎるので、我が学園では、これ以上御預かりできません』


 当時すでに、『勇者の恥』は世界中に晒されていたので、国をまたぐ『第一王子の失態』でありながら、セファイルとしては、小さな汚点が、また一つ増えたくらいにしか思わなかった。



 

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