92話 俺がピンピンしているように見えたか? なら、それは残像だ。俺はちゃんと死にかけているぜ。正直、自分でも自分に引いている。
92話 俺がピンピンしているように見えたか? なら、それは残像だ。俺はちゃんと死にかけているぜ。正直、自分でも自分に引いている。
「勝手に、死んだことにして、話を進めてんじゃねぇよ。湿度の高いイジメかっ」
「死んでいない? バカな……生命力は完全に尽きたはず……」
「HPが0になった程度で死ぬと、いつから錯覚していた?」
「……」
「お前ら全員殺すまでは死なねぇよ。その後は普通に死ぬ予定でスケジュールビッシリだが……それまでは死んでやらねぇ」
その様を見て、星桜が、SAN値をゴッソリと削られたような顔で、
「なんで……?」
と、シンプルな疑問を口にする。
「……『死んでもおかしくない』どころか、『死んでないのがおかしい』というハチャメチャな『ハチの巣具合い』やのに……なんで、そんなピンピンしとるんすか?」
「俺がピンピンしているように見えたか? なら、それは残像だ。俺はちゃんと死にかけているぜ。正直、自分でも自分に引いている。俺、なんで生きてんだろうね。不思議だね」
ツラツラと、中身のない言葉を口にしてから、
グっと腹の下に力を込めて、
視線の強度を高めつつ、
「……心配すんな……あそこにいる怖い奴らは、全部、俺が退治してやる。あいつら殺すだけなら……どうにかギリ可能……だから……心配しなくていい……絶対に守ってやるよ」
「ほんまになんでなん? なんで、そこまで出来るん? 怖すぎるんすけど……アウターゴッドなんかよりも、センセーの方がよっぽど。なんで――」
「なんでなんでとウルせぇよ、知的好奇心旺盛な5歳児か。いちいち説明するのも面倒だ。てめぇで勝手に想像しろ」
「……」
そこで、センは、輝木に視線を向けて、
「輝木……今後は、星桜と一緒に、頑張れ。『俺の地盤を引き継いだ星桜』と、『約束神化が使えるお前』がしっかりとタッグを組めば、GOOぐらいは秒殺できるだろうし、アウターゴッド級でも、よっぽどの上澄みじゃない限り、なんとか対応できるはずだ。全人類の未来、頼んだぜ」
そんなセンの要求に、
輝木は、
「いやですねぇ」
と、普通に拒絶しつつ、
そこで、
「――約束神化」
ザクっと、簡単に変身していく。
まだまだ、輝木は、自力で自由に変身できるわけではない。
輝木の約束神化は、『感情が暴走した時』にしか出来ない不安定な覚醒。
……つまり、今、輝木の全部が暴走気味に沸騰しているということ。
センが、星桜のことを、かなり気にしているという点に対して怒り心頭。
かつ、勝手に死のうとしている事に関しても怒髪天を衝くレベルの衝動。
「センイチバン。あなたが死んだら、私も一緒に死にますからねぇ。私は、全人類とかどうでもいいのでぇ。もし、この世界を守りたいと本気で思うなら、生き残って、自分でやってくださいねぇ」
と、サイコ全開なセリフを口にする輝木。
その横にいる星桜が、
輝木を見ながら、
「……やくそくしんか……」
その概念が、頭の中を一気に埋め尽くしていく。




