87話 『俺がお前を殺し切れるかどうか』は知らんが、『お前が俺を殺し切れる未来』は完全に死んだ!
87話 『俺がお前を殺し切れるかどうか』は知らんが、『お前が俺を殺し切れる未来』は完全に死んだ!
「情緒に文句言ってんじゃねぇよ、ゴミがぁあああ!! 漫画のセリフは、意味よりも語感の方が大事なんじゃい!」
などと叫びながら、センは豪速の瞬間移動で、ミゼーアの背後を奪うと、そのまま、
「だらぁあああ!! 神速閃拳!!!」
ミゼーアの後頭部と背骨に向かって、無数の拳を叩き込む。
頭も背中もへし折るつもりの強連打。
ダダダダダダダダッと、強い衝撃を受けたミゼーアは、
「……ほう……」
短距離瞬間移動で、センから距離を取り、
自分のダメージを冷静に確認しつつ、
「その携帯ドラゴン……アウターゴッド化しているね。……先ほどまでは、確実に、GOOクラスの力しか持っていなかったのに、急に。……いったい、何をしたのかな?」
「それは俺に聞いているのか? だとしたら、『ミゼーアは頭が悪い! 本当だからだ!』と叫ぶしかないな。メギドが急に強くなった理由なんざ、俺が知るわけねぇだろ。ナメんじゃねぇぞ。俺は、現状を一から十まで、まったく理解してねぇんだよ。ワケの分からん超展開に困惑しているだけの、顔面偏差値48。それが俺の全部だ。こんにちは!」
「……」
「いったい、何がどうなっているのか、さっぱり分からんが……『今の俺なら、てめぇと互角にやり合える』ということだけは、さっきの軽いぶつかり合いだけでも、なんとなくわかった。こうなったら、お前、終わりだぞ。『俺がお前を殺し切れるかどうか』は知らんが、『お前が俺を殺し切れる未来』は完全に死んだ!」
そう叫びながら、センはミゼーアに、再度特攻。
ミゼーアは、冷静に、センの動きを目で追って、今度は、攻撃を受けることなく、完璧に回避して、そのまま、丁寧なカウンターを、センの顎にぶちこんでいく。
「ぐえっ!」
と、血を吐きだすセン。
普通に、まあまあダメージを受けたが、しかし、死ぬ様子は皆無。
ミゼーアは続けて、ドガグンッと、芯のあるボディブローをセンにお見舞いする。
センの腹部を、木っ端みじんに吹っ飛ばすつもりの一撃だったが、
「ぐぅぉおっ!」
今度も、しっかりダメージを受けたものの、死んではいない。
感覚的には、ヘビー級王者のフックをもらった高校生と言った感じ。
そこらの高校生なら、ゲロ吐いて気絶しているところだが、
センぐらいの『根性の鬼』になると、白目が血走るぐらいで済む。
「ぜぇ……はぁ……」
センは、フラつきつつ、ミゼーアに、
「殴ったね……二度もぶった。おやじにもぶたれたことないのに!」
と、ご機嫌なファントムトークで世界をケムに巻いてから、
「……相当なじゃじゃ馬様だが、だいぶ扱い方が分かってきたぜ。メギドは、ワガママお嬢様に対する執事……いや、超絶ワガママ女王様に仕える老執事長のように、絶妙な間合いで対峙しなければいけない」
『アウターゴッドと殺し合う』という鉄火場の中で、メギドとの距離感を、把握しだすセンエース。




