86話 そんだけやっても、まだ借金が9割残ってんのかよ。いい加減にしてくれや。どんだけ俺から搾り取れば気がすむんだ。この人でなし!
86話 そんだけやっても、まだ借金が9割残ってんのかよ。いい加減にしてくれや。どんだけ俺から搾り取れば気がすむんだ。この人でなし!
「現状、なんとなく心で通じ合えているが、しかし、だからって、『誤解なく分かり合える』ってワケじゃないらしい。いい勉強になったよ」
と、心底鬱陶しそうに、そう呟いてから、センは、星桜に、
「田中・イス・星桜……メギドがお節介に教えてきたから、てめぇの、これまでの軌跡……そのぐらいは、理解できたぜ。まさか、俺が、今日までのうのうと生きてこられたのは、お前が、必死でこの世界を支えてきたからだったとは……どこまでも、ウゼェ女だ。何したって返せないような恩を勝手に売りつけてきやがって。この年で、借金まみれになるとは夢にも思っていなかったぜ。さて、どうやって返していこうかね……」
片足ジャンプで、トントンと、
自分の軸……体幹の調節をしてから、
「とりあえず、一旦、お前を守るために、アウターゴッドをぶっ飛ばす。で、お前の呪いも引き受ける。これで……1割ぐらいは返せるかな。……そんだけやっても、まだ借金が9割残ってんのかよ。いい加減にしてくれや。どんだけ俺から搾り取れば気がすむんだ。この人でなし!」
情緒が抜群に不安定なセンに対し、
星桜は、ただただ困惑した顔で、
「……ボク、なんも言ってないんすけど」
「お前のメギドが、俺の『頭の中』で、ずっと、ぴーぴー喚いてんだよ。言語が共通じゃねぇから、詳細は分からんけど、肌感的には、『お前に対して借金を返せ』と叫んでいる感じだ」
ちなみに、メギドのメッセージは、実際のところ、
『田中・イス・星桜と結ばれて幸せになれ』という感じのものなのだが、
そんな繊細なメッセージを真正面から受け止められるほど、
男としての出来がよろしくないセンは、メギドの、
『昭和時代のお見合いおばさん的な、余計なお世話メッセージ』を『暴対法成立以前のヤクザの取り立て』としか受け止められない。
ようするに、センエースは、頭が悪い!
「さて……それじゃあ、そろそろ始めようか。ミゼーア。覚悟しろよ」
その挑発に対し、
ミゼーアは、センに、
「……『覚悟しろ』というのは、どういう意味かな? その言葉のニュアンスには、『私を倒す』という意味も含まれているような気がしてならないのだが……それは、流石に、私の誇大解釈かな? ありえないとは思うが、一応確認しておこう。君は、もしかして、私を倒すつもりかな?」
「違う。貴様を殺すつもりだ」
「……」
「勝てんぜ、お前は」
「勝てんぜ……? 『勝てるぜ』と言っているのか、『勝てないぜ』と言っているのか、判断に困るんだが。言語は正確に取り扱ってもらいたい」
「情緒に文句言ってんじゃねぇよ、ゴミがぁあああ!! 漫画のセリフは、意味よりも語感の方が大事なんじゃい!」
などと叫びながら、
センは豪速の瞬間移動で、ミゼーアの背後を奪うと、
そのまま、
「だらぁあああ!! 神速閃拳!!!」




