85話 メギド・ルナ・センエース。
85話 メギド・ルナ・センエース。
ガンギマリの目で、天を仰ぎ、この世の諸悪を亜空切断するような咆哮をあげたメギド。
直後、メギドの全身が一度、グシャビジャッとバラバラに解体される。そして、勢いそのまま、秒で再構築。まるで、『今の星桜の心』を再現しているかのように、メギドがうねりをあげて変化していく。
……この『メギド』は、星桜が、『時空ヶ丘の地下遺跡で発見した古文書』という『程度の低い説明書』頼りに作った簡易版の携帯ドラゴン。
その性能は、極めて低く、とても、アウターゴッド相手に活用できるような代物ではない。
……のだが……
「きゅいっ!!」
オートで再構築されたメギドが放つ光は、
――少なくとも、素人目には、
『ミゼーアのソレ』と比べても、遜色があるようには見えなかった。
そんなメギドの新しい輝きを目の当りにしたセンエース。
メギドの光全部が、ズガンと脳の奥部に差し込まれたような、奇妙な感覚に陥る。
脳の深部の中央で、メギドと、深い対話ができた気がした。
拙い言語ではなく、第九感あたりの何かしらで通じ合うニュータイプ的な高次の対話。
お互いの想っていることが、ミクロ単位で理解できた気になるという妄想。
妄想なのか誇大妄想なのか分からないが、
そんなことはどうでもいいと、心底から思えた。
一瞬の中、精神の奥底だけで、メギドと魂の対話を果たしたセンは、
「お前の魂魄に刻まれた正式真名……『メギド・ルナ・センエース』ってのか。……なんで俺の名前が入ってんのか、よくわからんが……お前の『覚悟』……確かに承った。使ってやるよ。だから……全部、よこせ」
そのオーダーを受ける前から、
メギドは、そのつもりだったようで、
「きゅいっ!」
なんの問題もなく、
センエースとトランスフォーム化を果たす。
メギド・ルナ・センエースを着込んだセンは、
自身の奥底から湧き上がってくるオーラと魔力を感じながら、
「……なんか……この状態だと、すげぇ、力が扱いづらい……なんでだ……メギド……」
問いかけると、言語ではなく、
目と目で通じ合うように、
心の奥底で『理解』が後から駆け寄ってくる。
ちなみに、正式名称の『メギド・ルナ・センエース』だと長いので、
センは今後、これまで通り、通称は『メギド』でいくつもりの様子。
「……俺に所有権の一部が移っても、メギドの中枢に刻まれた『田中・イス・星桜の精神システムと同期している』という前提に変わりはないから、『星桜と付き合うのと同じぐらい、振り回されてしまう』というのがデフォルトになる? …………ネタじゃなく、普通に、ちょっと、何言っているか、わかんねぇ。現状、なんとなく心で通じ合えているが、しかし、だからって、『誤解なく分かり合える』ってワケじゃないらしい。いい勉強になったよ」
と、心底鬱陶しそうに、そう呟いてから、
センは、星桜に、
「田中・イス・星桜……メギドがお節介に教えてきたから、てめぇの、これまでの軌跡……そのぐらいは、理解できたぜ」




