83話 『外したら死ぬフリースローを1万回連続で成功させる』よりも、『ドリームオーラ・オメガバスティオンを1回成功させる』方が、遥かに難しい。
83話 『外したら死ぬフリースローを1万回連続で成功させる』よりも、『ドリームオーラ・オメガバスティオンを1回成功させる』方が、遥かに難しい。
「……ここから、えぐい泥試合の始まりだ。お前の攻撃を、俺が永遠に無効化し続ける……そんな『非生産性の権化』ともいうべき『不毛な時間』を、ぜひ、楽しんでくれ。で、途中で飽きて帰ってくれ」
「君のキャンセル技は、一回使うだけでも、相当な体力と精神力を消耗する技とお見受けする。……永遠に防ぎ続けることは不可能」
そう言いながら、ミゼーアは、
無詠唱の連続魔弾をセンに向かって放出した。
マシンガン&散弾銃のような、殺意マシマシの、イカついグミ撃ち。
えげつない速度と量の魔弾。
その嵐の中、センは、
鼻血を垂れながしながら、
ドリームオーラ・オメガバスティオンで防ぎ続ける。
この数秒の中で、
回数的に、だいたい、数千回ほど、
ミゼーアの魔弾を、ドリームオーラ・オメガバスティオンで防いだセン。
ここで、改めて解説しておくが、
ドリームオーラ・オメガバスティオンは、
『一回成功させるだけ』でも、とんでもなく大変な技である。
『外したら死ぬフリースローを1万回連続で成功させる』よりも、『ドリームオーラ・オメガバスティオンを1回成功させる』方が、遥かに難しい。
そんな地獄を、数千回、当たり前のように成功させたセンを見て、
ミゼーアは、魔弾を撃つ手を止めて、
「……素晴らしい」
惚れ惚れとした顔で、
「狂気的な精神力と集中力……人間とは思えない……肉体は脆弱だが、メンタルだけなら、アウターゴッドに匹敵する」
センは、疲労困憊の様子で、
フラつきながら、
「すげぇ……だろ。俺は……役に立つ……だから……ペットとして、飼った方がいい。……で、多少は、ワガママを……聞いた方がいい……」
と、再度交渉をしていくセンだが、
しかし、そんなセンに、ミゼーアは、
「君には、少しだけ恐怖を感じてきた」
「……あん?」
「君と交渉するのも、悪くないかもしれない……という想いと同時に、君の生存を許可することは、私自身の危機に直結するかもしれないという不安が沸き上がってきた」
「いやいや、ミゼーアさんよぉ……アウターゴッドともあろう者が、人間ごときに、恐怖を感じることなんかないって。俺なんて所詮はペットどまり。……かわいいペットとして、懐いてやるし、番犬として機能もしてやるから、余計な疑心暗鬼に苛まれたりせず――」
「それほど疲弊していながら、しかし、君の目は一切死んでいないな。ひたすらに未来だけを睨み続けることができる気概。アウターゴッドである私のSAN値を削ってみせた異次元の怪物性。その狂気的な胆力……あまりにも不気味だ。……悩むまでもなく決定。……君はここで殺しておく……」
その結論を前にして、センは、一度、天を仰ぎ、深いタメ息をつきながら、
「なんで、そうなるの……」
しんどそうにそうつぶやいたセンの背後から、
星桜が近づいてきて、
「センセー、ボクの呪い、返して」
などと、『空気が読めていないにも程がある戯言』をぶちかましてきた。




