82話 お前の攻撃を、俺が永遠に無効化し続ける……そんな『非生産性の権化』ともいうべき『不毛な時間』を、ぜひ、楽しんでくれ。
82話 お前の攻撃を、俺が永遠に無効化し続ける……そんな『非生産性の権化』ともいうべき『不毛な時間』を、ぜひ、楽しんでくれ。
「龍閃崩拳っっ!!!」
今のセンに出せる全力の一撃をお見舞いしていく。
それは、素晴らしい一撃だった。人類という脆弱種の視点では、間違いなく最高峰の一撃。
……そう。決して悪い一撃ではなかった……のだが……
しかし、
「……ふむ……」
ミゼーアは、まるで『試飲会でニュービールの喉越しでも確かめているかのよう』な、カジュアルな態度で、
「悪くはないね。非常に重たい拳だ。そこらのグレートオールドワンぐらいだったら一撃で葬り去ることができるだろう。君は、気合の入り方が、とにかく尋常ではない。……まあ、だからといって、私と君の差が埋まることはありえないが」
「……ですよねぇ……」
ノーダメージという現状に、
もちろん、ショックを受けつつも、
しかし、相手がアウターゴッドなんだから、
それも当然だよねぇ……
という、複雑な感情の中で、
苦笑いを浮かべることしか出来ないセンさん。
「君では、永遠をかけても、私を殺せない。無駄な抵抗はやめた方がいい。時間の無駄だ」
「ごもっとも。反論の余地もございやせん」
「その揺るぎない現実を前にして……それでも抗うのかい? この私に」
「……それしか道がないもんでね。他に選択肢があるなら、そっちを選びたいんすけど、いかんせん、ゴリゴリの背水なもんで」
「……ふむ。では、私の配下になるといい」
「へ」
「君ほど稀有な存在は珍しい。私の、今回の仕事は、この世界に存在する者の殲滅だが……君だけは特別に生存を許可しよう。私の配下として、今後、尽くしてくれ」
「……」
「私が人間という脆弱種を『認める』というのは、本来ありえないのだが……君だけはペットとして飼ってやってもかまわない。自分の才能を誇り、歓喜するがいい。君の大道芸には、それだけの価値がある」
「なるほど……じゃあ、ミゼーア様。この世界は俺のものだから、消さないでくれ。ペットの頼みを、どうか聞いてほしいわん!」
「それは無理だ。生存を許可するのは君だけ。その特権に対する優越感が、君というペットに対する、最大のご褒美」
「全員を助けてくれないならペットにはならない。全員を助けてくれるなら、あんたの配下の中でも飛びぬけて有能な配下になってみせる。……こんな、極めてお得な条件の交渉なら、どうすか?」
「流石に、それほどの価値はないね。君の条件を飲む気はない」
「……そうすか……しんど……」
と、センは、タメ息交じりにそう言ってから、
キっと視線を強くして、
「じゃあ、覚悟しろよ、ミゼーア。……ここから、えぐい泥試合の始まりだ。お前の攻撃を、俺が永遠に無効化し続ける……そんな『非生産性の権化』ともいうべき『不毛な時間』を、ぜひ、楽しんでくれ。で、途中で飽きて帰ってくれ」
「君のキャンセル技は、一回使うだけでも、相当な体力と精神力を消耗する技とお見受けする。……永遠に防ぎ続けることは不可能」




