80話 ここまでくると、流石に、当人も、『うんっ、ぼく、ちょっと量産型じゃないかも♪』と、薄々勘づきかけてはいる。
80話 ここまでくると、流石に、当人も、『うんっ、ぼく、ちょっと量産型じゃないかも♪』と、薄々勘づきかけてはいる。
無敵の精神力単騎で、『全身を襲う症状』を、
パワハラ全開に、これでもかと、完全に黙らせてから、
「……さて……じゃあ、行こうか……しゃーねぇから、守ってやるよ。人類全部」
ガンギまった目で、ミゼーアをにらみつける。
異常メンタルによって、吐き気が強制的に抑えつけられる。
『気合い』が『病』を凌駕するのは、現実的に、ありえなくもない話だが、センのソレは、格が違った。
人外の根性を前にすれば、世界級の呪いであっても、怯えて鳴りを潜める。
そんなセンの、尋常ではない気迫を前にして、
セラは、目を丸くしつつ、
「……ボクの呪いを……奪っただけやなく……ねじふせた……? 嘘やろ? え、なんで、そんなことできるん? 意味わからへん……」
ドン引きしている星桜を置き去りにして、
センは、ゆっくりと、ミゼーアに近づいていく。
手を伸ばせば届く距離まで近づいたところで、
ミゼーアが、
「脆弱な器……しかし、威圧感だけはアウターゴッド級。稀有な生命体だね」
「そうでもねぇさ。俺なんて、所詮は、どこにでもいる、量産型汎用ラノベ主人公に過ぎない」
『全人類を守るために、人外の気合いで、狂気の呪いをねじふせて、外なる神に、本物のガンを飛ばす』
――という、もはや『ソリッドなボケ』と言っても過言ではない、
常軌を逸したキチ〇イを全開にフルバーストしていながら、
それでも、センは、『量産型』を騙っていく。
ここまでくると、流石に、当人も、
『うんっ、ぼく、ちょっと量産型じゃないかも♪』と、
薄々勘づきかけてはいるが、
しかし、もはや後には引けないので、
彼は、今後も、バカみたいに、
自分のことを一般人だと言い張り続けるだろう。
「ふふふ……君のような生命体が量産されている世界なんてものがあったとしたら、流石の私でも、泡を吹いて失神してしまうな」
と、そんな事を口にしたところで、
それまで、『センのキチガイぶりに驚愕するばかりだった星桜』が、
ダっと、飛び出して、
「トランスフォーム!!」
一瞬のうちに、メギドを鎧状にして着込むと、
アイテムボックスから、でっかい剣を取り出し、
「うらぁああああっ!!」
と、腹の底から声を出して、
ミゼーアを一刀両断しようと
オーラと魔力を込めた剣を振り下ろす。
そのムーブの一から十まで、
ミゼーアは完全に知覚していたので、
避けようと思えば、もちろん余裕で避けられたのだが、
あえて、ミゼーアは、星桜の一刀を、何もせずに、その場で受け止めた。
その場で受け止めた、とはいうものの……
星桜の剣は、まるで、霞でも切ったみたいに、
ミゼーアの体を抵抗感ゼロで、スカっと通り抜ける。
あまりに手ごたえがなさ過ぎて、バランスを崩しそうになった星桜の腕を、
ミゼーアは、紳士的に、ガシっと掴み、
『幼児がこけないように』といった具合で、姿勢を整わせると、
パっと手を離し、
「君が極めて優れたマジックアイテムを保有していることは理解したが……ソレが通じるのは、GOOまでだね」




