73話 チーム蝉原。
73話 チーム蝉原。
(夜までそんなに時間がねぇ。どっちに転ぶにしても、300人委員会の連中と遊んでいる間にタイムアップになるだろう。……そもそも、田中トウシに相談できたところで、何がどうなるってわけでもないのが現状。ワラにもすがる思いで、『できれば、あいつの知恵を借りたい』ってだけなのに、そのワラが、無駄に遠すぎる)
大きなため息をつきながら、
センは立ち上がり、
「邪魔したな、爺さん。俺はもう帰る。今夜の闘いのために、精神の一つでも、統一しとくわ」
そんな事をつぶやき、この場を後にしようとするセンの背中に、
マサヨシが、
「何の力にもなれず、申し訳ない……」
力なく、うなだれるように、そう言いながら、深く頭を下げた。
★
――認知の領域外で、
でかいエアウィンドウに表示されている『田中トウシの様子』を観察している、
『蝉原勇吾』と『ショデヒ』の二人。
『田中トウシ』が『何もない真っ黒な空間で右往左往している様子』を尻目に、
蝉原が、ボソっと、
「だいぶ時間と手間がかかったけれど、どうにか、領域外に隔離することができた」
ふぅ、と深いため息とともに、そんなことをつぶやく。
「……それなりに手間はかかったけど、ここまでくれば、流石の田中トウシも、しばらくは動けない」
「センエースのCPU、田中トウシ……調べれば調べるほど、こいつは異常だな。これとセンエースを同時に相手取るのは流石にごめんこうむる」
「同意見だね」
「……田中トウシを隔離できる期間はどのぐらいだ?」
「数日が限界だね。……『そこらの一般人なら永遠をかけても脱出できない、ガチガチの幽閉状態』だけど……田中トウシは次元が違うから、『全ての鎖を断ち切るのに3か月はかかる』と俺は予測する。よって、数日が限界だ」
「……3か月はかかると予想して、数日が限界? 蝉原勇吾……貴様、言語中枢に何か大きな支障が出ていないか?」
「田中トウシも、センエースも、俺の予測を大幅に超えてくるのが基本。俺は、『突き詰めた努力』と『リアルな計算』で、『田中トウシでも、数か月はかかるだろう』と確信できるだけの隔離状態を創り上げたけれど……だからこそ、田中トウシは数日前後でブチ破ってくるだろうという確信を持てる」
「……自分が、むちゃくちゃなことを言っている自覚があるか?」
「俺が無茶苦茶なのではなく、田中トウシとセンエースが無茶苦茶なんだよ、ショデヒ」
そう言って笑ってから、
「……リミットは近い。田中トウシが解放されるまでにカタをつけるしかないぞ」
「了解した」
★
その日の夜。
学校に集まったのはいつものメンツ。
センエース、久剣、輝木、ウルア。
「今夜も、当然のように、元気に、全員集合の『チーム蝉原』なのであった。……この嫌がらせ、ダルいわぁ……」
ダルそうに、ボソっとそういうセン。
そんなセンに、センの手の中にある蝉原デスガンが、
「まさか、この期に及んで、まだ、この宇宙人討伐隊の名称を『チーム蝉原』と呼ぶとは……君の往生際の悪さは、本当に、常軌を逸しているねぇ」




