72話 300人委員会は決して一枚岩ではない。無数の派閥が、あやういバランスの上で、球乗りをしているような状態。
72話 300人委員会は決して一枚岩ではない。無数の派閥が、あやういバランスの上で、球乗りをしているような状態。
「これまでは、アウターゴッドはおろか、グレートオールドワンが飛来してきたことすら、今までは一度もなかった。いや、あるいは、一度もなかったと思い込まされているだけかもしれないが。……とにかく、現状は前代未聞。ゆえに、『信じたくない』という想いもあるのではないかとも思う。人間は弱いのだ。君のような強い人間には想像もつかないぐらい」
「……」
「感情論だけではなく、現実問題として、この話には、厄介な点が多い。……田中家のエンジニアが開発した『特殊エネルギー』を観測できるレーダーは、『オーラや魔力といった、特異なエネルギーを発する敵性エイリアンや異世界転移体』を『確実』に観測できる……と、認識している。そのレーダーが、何の反応も示していない上、公安五課の調査でも何もでなかった。となれば、『田中家にスパイ行為を試みようとする者の虚言である可能性が高い』と判定されるのも、事情を知らない人間の視点では、ある意味当然かもしれない。田中家に対してスパイ行動を行おうとしている組織は多い。だから、どんな理由であれ、慎重になってしまうのだ」
「くそダルい話だぜ……こうなったら、頭空っぽにして、『黙って俺に投資しろ!』とか狂ったように叫びつつ、300人委員会に殴り込みをかけるか? 頭おかしい奴のふりして、問答無用で暴れ回っていれば、賢い上流貴族様を気取っている連中も、軒並みビビり散らかして、少しは『俺にとって都合のいい世界』が出来上がるだろ」
と、だいぶ無茶な暴論を繰り広げていくセンに、
マサヨシは、渋い顔で、
「仮に、それをした場合、君こそが、敵性勢力と判定され、より、田中家の情報から遠ざかる可能性が高い。恐怖は人を動かすこともあるが、頑なにさせる事の方が多い。……300人委員会は決して一枚岩ではない。無数の派閥が、あやういバランスの上で、球乗りをしているような状態。人間の愚かさと業と欲を煮詰めたような組織だと考えた方がいい。そんな組織に、圧倒的暴力という混沌をもたらした時に起こりうるのは調和ではなく、さらなる混沌だろう」
そんなマサヨシの言葉に、
センは、心の中で、
(……実際のところ、どう転ぶか知らんが……『有識者』いわく、俺にとってマイナスに傾く可能性が高い……か)
受け攻めいくつか考えた結果、
(……もう、夜までそんなに時間がねぇ。どっちに転ぶにしても、300人委員会の連中と遊んでいる間にタイムアップになるだろう。……そもそも、田中トウシに相談できたところで、何がどうなるってわけでもないのが現状。ワラにもすがる思いで、『できれば、あいつの知恵を借りたい』ってだけなのに、そのワラが、無駄に遠すぎる。あいつ、マジでナニモンなんだよ。天才すぎるとは思っていたが、家族ぐるみで変態一族だったとは……)




