70話 大いなる田中家の情報は、田中家の『エンジニアタイプ』が総出でセキュリティを担当しているため、田中家以外の者では、そうそう近づけない。
70話 大いなる田中家の情報は、田中家の『エンジニアタイプ』が総出でセキュリティを担当しているため、田中家以外の者では、そうそう近づけない。
白塗りのロールスロイスに揺られて、たどり着いたのは、高級住宅地のど真ん中。
日本家屋の超豪邸。無駄にでかい門を抜けて、中に入る。家の中は、時代劇の城の中みたいになっていた。
客間に通されたセンは、座布団の上で、あぐらをかいて、ウルアの爺さんが来るのを待つ。
(……でかい家に住みたいっていう欲望に関しては、正直、意味がわからねぇんだよなぁ……家なんて、1LDKが一番住みやすいと思うんだが。……狭い方が、掃除も秒で終わるしよぉ)
脳内で、そんなことをつぶやいていると、
障子戸が開いて、見るからに厳格そうな爺さんが登場。
センの顔を見るなり、
その爺さんは、センの目の前で、綺麗な土下座をしてみせた。
ウルアのお辞儀とは違い、完全に土下座の姿勢だが、
しかし、あまりにも威厳たっぷりなので、
土下座特有の悲壮感などは一切感じない。
センが面食らっていると、
爺さんが、
「お初にお目にかかる。私の名は金戸正義。ウルアの祖父だ」
自己紹介をしてから、そのまま、
「閃壱番くん。君が、世界を救うために奮闘してくれたことはウルアから聞いている。そんな君の力になれずにすまない。大いなる田中家の情報は、田中家の『エンジニアタイプ』が総出でセキュリティを担当しているため、田中家以外の者では、そうそう近づけないし、ハッキングなんてもってのほか。永遠をかけても、最初のゲートをくぐることすら出来ない」
センが、マサヨシに頼みたかったことを、
マサヨシはすでに実行しており……そして失敗していた。
「上に事情も説明したんだが……『敵性エイリアン』や『異世界関連』の『波動』は観測されていないと言われてしまった。……さらに、公安五課の『異界事件』特別対策係特命捜査官を調査員として現地(東高)に派遣したのだが、『なんの痕跡もない』という報告がきた。これでは、上を説得することも出来ない」
「……思った以上に、行動がスピーディじゃないっすか。異世界の波動だの、公安だの……色々と気になる点はあるが……今は、その辺、どうでもいいや」
と、いったん、前を置いてから、
「痕跡がないとか、波動を観測できないとか……それって、ようするに、『うまいこと、証拠を隠されている』ってことっすよね。犯人は、おそらく、ショデソウ……あいつの嫌がらせとみて間違いなさそう。……爺さん。あんた視点だと、俺や金戸センパイが嘘をついているって可能性も微レ存ってところか?」
「ウチの孫娘が嘘をついている可能性に関しては一切考えていない。ウチの孫娘は、そこまで愚かではないし……それに……」
「なんすか?」
ジっと、センの顔を見るウルアの爺さん。
惚れ惚れとした顔で、
「とてつもなく高潔なオーラ。これほどまでの高貴で穢れのない覇気を感じたのは……初めてだ。まさか、ここまで逸脱した気高さを有する人間がいるとは……」




