65話 敵の髪や爪を切るだけではポイントにはならない。あくまでも、ポイントは討伐報酬。
65話 敵の髪や爪を切るだけではポイントにはならない。あくまでも、ポイントは討伐報酬。
「相手が悪かったな! まあ、俺が強かったのではなく、毘沙門天が高性能だったってだけだが!」
などと叫んでいると、毘沙門天が、『サクっと死んだコス&ファロール』の『死体』を、まるで、スポイトで水を吸い取るようにして、グググイっと刀身に取り込んでいく。
――その様子を目の当りにしたセンが、
「おいおいおいおい、何してる?! もしかして、GOOの死体を食べてる的な感じ?! それ、大丈夫なやつ?! お腹、壊さない?!」
と、心配している間に、
毘沙門天は、かけらも残さず、
コス&ファロールの死体を、その身に取り込んでしまった。
ヒュンヒュンと軽やかに飛翔して、
己の背後に戻ってきた毘沙門天に、
センは、
「お前、あれだよね……結構、俺の命令とか関係なく、勝手に動くよね。……剣翼って、そういうものなのかな? ほかの例がないから、よくわからんけども……」
と、困惑しているセン。
毘沙門天は何喰わぬ顔で、
センの背中で、後光のように輝いているばかり。
――と、そこで、
空中にエアウィンドウが出現し、
そこに映るショデソウが、
「コス&ファロールの撃破、お見事」
そう言いながら、拍手をしつつ、
「しかし、コス&ファロールは、『明日召喚する予定のアウターゴッド』のための生贄……つまり、アウターゴッドの付属品。アウターゴッドの髪の毛のフケや爪の垢……みたいなものと考えてくれていい。敵の髪や爪を切るだけではポイントにはならない。あくまでも、ポイントは討伐報酬。……もし、明日召喚されるアウターゴッドを倒すことができたら、その時は、大量のポイントを与えよう」
そんなショデソウの発言に、
センが、青い顔で、
「え……明日、アウターゴッドが、確定でくるの? ……マジかよ」
これまでのあれこれも踏まえ、
頭の中で、色々と、不安な妄想がめぐる。
「……『クソ雑魚のムンビ』を生贄にウムルが出たってことを考えると……『普通に強かったGOO二体』を生贄にしているアウターゴッドは、もしかしなくとも、普通にウムルより強いってことじゃねぇの?」
その疑問符に対し、
これまで、『質問にはこたえない』と言い続けてきたショデソウが、
「お察しの通り、明日、召喚されるアウターゴッドは、ウムルDよりも上位のアウターゴッド。ハッキリ言って、貴様らがどうこうできる相手ではない」
「……ビビらせてくれるじゃねぇか。言っておくが、今の俺の怯え方はハンパじゃないぜ。かわいい女子の前だから、どうにか、意地はって、泣いてないだけで、もし、ここにいるのが俺一人だったら、とっくの昔にションベンを垂らし終えていて、ワンワンと、生まれたての赤子みたいに泣いていた」
と、素直に、心を吐露するセン。
冗談っぽく口にしているが、
普通に、頭の中は恐怖で一杯になっている。
マジで、かわいい女子の前なので、我慢しているだけで、
そうじゃなかったら、明日が不安すぎて、号泣している。




