63話 君はこれまで、狩る側だったけれど、今日は狩られる側になる。そうやって命はまわっている。それだけの話さ。
63話 君はこれまで、狩る側だったけれど、今日は狩られる側になる。そうやって命はまわっている。それだけの話さ。
「ははは。俺ごときがセンくんに匹敵? 見る目がないねぇ。彼と比べたら俺なんてカスみたいなものだよ。センくんが月なら俺はスッポン……いや、そこまでいいものじゃないな。精々、セミやゴキブリぐらいのものだろう」
などと言いながら、
蝉原は、シュンっと優雅に、
コス&ファロールの背後に転移して、
ガッと、二体の頭を掴むと、
何も言わずに、ビリビリッっと、
頭に大量の電気を流し込んでいく。
「「ぐがががががががががががががががががががががががががががががっ!!」」
真っ黒になり、ブスブスとケムリを吐いている二体を見つめながら、
「君たちのような供物に、意識も感情もいらない」
そんな、鬼のようなことをいう蝉原に、
『まだギリギリ意識が残っているコス』が、
「た……頼む……助けて……くれ……見逃して……くれ……まだ……死にたく……ない……」
と、すがりつかれた蝉原は、
いつものニタニタ笑いのまま、表情をほぼ変えず、
「命乞いか。ふふっ。……コス。君も、これまでの永い神生の中で、散々、されてきたよね? 『助けてくれ』『殺さないでくれ』『お願いしますから許してください』……そんな風に請われた際に、君は何を思ってきた?」
「……」
「神話生物の中でも、嗜虐性が人一倍高い君は、これまで、何度も、イタズラに弱い命をもてあそんできた。……すがりついてきた弱者を、嗤いながらすりつぶしてきた」
「反省……しています……だから、どうか……許して……」
「反省? ……はは。勘違いしているようだから、最初にちゃんと言っておくけど、君がどういう風に生きてきたかに関して、俺は、どうとも思っていないよ。高評価も低評価もしていない。ただ、君が、そういう神格だと、正しく認識しているだけ」
そう言いながら、蝉原は、コスの頭に、
もう一度、強めの電流を流し込む。
「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」
ぶすぶすと濃い黒煙を吐き出しているコスに、
蝉原は、無表情に近いニコニコ顔で、
「俺は君に何の感情も抱いていない。粛清したいとも、反省を促したいとも思っていない。……ただ、『ついに君の番がきた』――現状は、それだけの話だよ、コス。君はこれまで、狩る側だったけれど、今日は狩られる側になる。そうやって命はまわっている。それだけの話さ」
★
センたちは、夜の学校で困惑していた。
コスとファロールがいなくなってから、1分ほどが経過したところで、
センは、しびれを切らしたように、
「おい、ショデソウ。聞こえてるか?! 聞こえていたら返事をしろ。で、どういう状況か教えてくれ。これ、どういう状態? なんか、GOOが謎に逃げたんだけど。これは、もう、撃退したということでいいの? 俺ら、帰ってもいい感じ? 帰っていいなら、秒で帰って寝たいんだけど」




