62話 センエースの『何より恐ろしいところ』は、『敵が自分(センエース)より強くても、無限に抗い続ける』というところだ。
62話 センエースの『何より恐ろしいところ』は、『敵が自分より強くても、無限に抗い続ける』というところだ。
異次元空間に逃げ込んだコスは、両手を膝につき、汗だくの顔で、何度も息をつく。
そんなコスに、ファロールが、
「どういうことだ、コス。いい加減、説明をしろ。『センエース』とはなんだ。さっきのあいつは人間にしか見えなかったぞ」
「わ、私は……夢で未来を見ることができる能力を持っている。断片的かつランダム性の強い能力で、自分が見たい未来を見られるわけではないのがネックだが、かなり有益で効果的な力……」
「貴様が、そういう能力を持つというのは、噂で聞いたことがあったが……本当だったのか。しかし、それがどうした」
「私は、何度も、やつの……センエースの夢を見た」
「……ほう」
「あいつは化け物の中の化物だ。私は、あいつが、山ほどのアウターゴッドを殴り殺しているところを……何度も夢に見ている。時には、私自身が殴り殺される夢も……」
「山ほどのアウターゴッドを殴り殺す? そんなこと、人間に出来る訳がないだろう……」
「センエースは人間ではない。怪物の中の怪物だ。アレを人間と定義すべきではない」
「……」
「センエースの『何より恐ろしいところ』は、『敵が自分より強くても、無限に抗い続ける』というところだ。仮に、この時点でのヤツの力が、我々を下回っていたとしても……勝敗には関係がない。われわれとの戦闘で経験値を詰み、いずれ、我々を超え、あっさりと殺してくるだろう。……やつが『カスみたいな力しか持っていないくせに、一気に強くなって、強者を叩き潰す』ところも、私は何度も夢に見ている……」
「……にわかには信じがたいが……嘘をついているようにも見えないな」
「なぜ、あの星に召喚されたのか知らんが……あの場にセンエースがいる以上、なにも関わらずに、このまま逃げるべきだ」
そう言って、異空間を移動しようとしたコス。
そこで、背後から、
「いやいや、逃げられちゃ困るよ。君たちの仕事は、『アウターゴッドを召喚するための生贄』として、センくんに殺されることなんだから」
そんな声が響いて、
後ろを振り返ると、
そこには、軽薄そうな色黒のヤンキーが一人。
彼の顔を見たコスは、
「ぬぉおおっ!! せ、セミハラユーゴっっ!!」
と、センを見た時と、ほぼ変わらない驚愕の顔をしてみせた。
隣のファロールが、
「コス! 何者だ?! あいつも、化け物なのか?!」
「セミハラユーゴ……センエースに匹敵する化け物……邪神の中の邪神だ……こいつも、何度も夢に見た……センエースと互角に殴り合っているところを……」
そんなコスのセリフに対し、
蝉原が、けらけらと、小ばかにするように笑って、
「ははは。俺ごときがセンくんに匹敵? 見る目がないねぇ。彼と比べたら俺なんてカスみたいなものだよ。センくんが月なら俺はスッポン……いや、そこまでいいものじゃないな。精々、セミやゴキブリぐらいのものだろう」




