53話 金持ちを狙うのは、リスクが高いんだよ。やるなら、一族郎党皆殺しにしないと、必ずカエシをくらう。
53話 金持ちを狙うのは、リスクが高いんだよ。やるなら、一族郎党皆殺しにしないと、必ずカエシをくらう。
「感謝とか愛とか……はっ。笑わせないでよ。ふふ……はははっ。ほんと、おかしいわ。あなたのような悪人の口から、そんな言葉が出てきたのが、ほんと、おかしい」
「君は、本当に……優秀な悪女だ。俺が知る大勢のクズたちの中でも、相当上位に入る逸材……そんな君だったら、多少は楽しめるんじゃないかと思った。けど、何も感じなかった」
「ちょっと、クズって言わないでくれる? 私は、賢く生きているだけよ」
「俺は、もう、たぶん……今後、永遠に……女ではイケないんだろうな」
そう言いながら、
蝉原は、アイテムボックスから、拳銃を取り出して、
その銃口を、彼女に向ける。
「え、それ、どこから出したの? ていうか、なんで、急に手品やったの?」
銃口を向けられていながらも、
しかし、
『殺されるわけがない』と思っているのか、
あくまでも呑気な彼女に、
蝉原は、
「そんなことはどうだっていいんだよ。それより、これから、君は、頭を撃ち抜かれて死ぬんだよ? もっと言う事ないのかい?」
「……えっと、冗談よね?」
軽くビビリながらも、
まだ、冗談だと思っているのか、
いまいち、緊迫感にかけているケバい美女。
そんな彼女に、蝉原は、
「君が殺した3人目の男……『C男の父親』からの依頼を受けた。大事な跡取り息子を殺したバカ女に制裁を加えてほしい、と。……金持ちを狙うのは、リスクが高いんだよ。やるなら、一族郎党皆殺しにしないと、必ずカエシをくらう」
「ちょ、ちょっと待って……うそよね? あなたは……だって……私と同じタイプの人間でしょ? 私の気持ちがわかるでしょ? 私たち、同類でしょ! だったら、一緒に生きましょうよ! 私、あなたなら、ちゃんと愛せる! だから!」
「同類だよ。俺も君も、同じ。……人の生き血をすする悪魔だ。ただ、一つだけ、君と俺で、決定的な違いがある」
「……違い……?」
「俺はセンエースを知っている」
「……せん……えーす……?」
パァンッ!
と、容赦なく引き金を引いた蝉原。
ケバい美女の額には、穴があいていた。
苦しむことなく、一瞬で綺麗に死ぬことができて、彼女は幸運だったかもしれない。
蝉原は、銃をアイテムボックスにしまいながら、
「センくんの名前を口にしただけだというのに……普通にイラっとしてしまった。俺も、ずいぶんとワガママになったものだ」
なんて、ボソっとつぶやいたところで、
『――何を遊んでいる、蝉原勇吾』
目の前に出現したエアウィンドウ。
そこに映し出されている『ショデヒ』が、
イライラした顔で、そう言ったのに対し、
蝉原は、静かに微笑んで、
「遊んでいたわけじゃないよ。確認していただけだ。大事なことをね」
『無駄なコトをしているヒマはないぞ。もはや、GOOでは、センエースの相手にはならない。最低でも、アウターゴッドを召喚しないと』
「わかっているよ。今回、ガタノトーアを投入したのは、ただの箸休め。ウルアと輝木が出会ったことによる化学反応の方がメインだったからね」




