52話 神様って私のことが大好きなんだなぁ、って思ったものよ。神様って、いつも私の味方なの。味方っていうか、下僕?
52話 神様って私のことが大好きなんだなぁ、って思ったものよ。神様って、いつも私の味方なの。味方っていうか、下僕?
「一緒に生活していると、鬱陶しいことが多いし。でかいと邪魔なのよ、色々。食費もかさむしね。……『死んでほしい』・『いつか殺したい』と思っていたけど、本気で殺そうとは思ってなかったわ。だって、殺したってメリットが少ないもの。本音の本音で言えば……どこかのタイミングで、捨ててやろうと思っていただけ」
「そんな時、たまたま死んでくれた、と?」
「ええ。だから、嬉しかったわぁ。神様って私のことが大好きなんだなぁ、って思ったものよ。神様って、いつも私の味方なの。味方っていうか、下僕? ふふっ」
「……まあ、ある意味で、神は、君みたいな女が好きかもね。面白い器ではあるから。ちなみに、3人目のC男は? まさか、そっちもたまたまとか言う気じゃないよね?」
「3人目は普通に殺したわ。だって、すっごいお金持ちだったけど、ものすごいケチだったんだもの。年収10億をこえているくせに、私には、月200万の小遣いだけで生活しろって言うのよ。信じられる? バカにするなって思ったわ。私はそんなに安い女じゃないのよ」
(俺からすれば、1円の価値もないけど……まあ、自分の価値をどう思うかは個人の勝手だから、好きにすればいいけどね)
心の中で、そうつぶやいてから、
蝉原は、
「君の3人目の旦那……C男は、君と住むための豪邸を購入する予定だったようだよ。流石にかなりの額になるから、購入するまでは、お金を貯める必要があった。君に月200万の小遣いを提示したのはそのため。本人は月2万円前後の小遣いでやりくりしていた。……という情報が俺のもとには入っているんだけど、それを聞いて、君はどう思う?」
「キモすぎ。吐きそう。……ウエェッ」
本気で気持ち悪そうにそういいながら、ケバい美女は、蝉原から視線を外し、
窓の外を見つめて、
「……家とか、別にいらないわ。あの男のこと、嫌いだったから。50を超えている男に、性的な魅力なんて感じないし、一緒の時間を過ごしたいとも思わない。私は、いい男と遊び回れるお金が欲しくて、『金だけもっているジジイ』を捕まえたの。それなのに、毎月のお金を減らして、家を買うための貯金とか……ほんと、ふざけすぎ。キモ。もう死んでいるけど、まだ殺したいわ」
「素晴らしいね。君の邪悪さは、見事だ。君は、死んだ旦那三人に対して、尊敬の念も、感謝の気持ちも、愛情も、謝罪の気持ちも、一切抱いていない」
「当たり前でしょ。感謝とか愛とか……はっ。笑わせないでよ。ふふ……はははっ。ほんと、おかしいわ。あなたのような悪人の口から、そんな言葉が出てきたのが、ほんと、おかしい」
「君は、本当に……優秀な悪女だ。俺が知る大勢のクズたちの中でも、相当上位に入る逸材……そんな君だったら、多少は楽しめるんじゃないかと思った。けど、何も感じなかった」




