51話 あなたのところの掃除部隊って、本当に有能よね。素直に、凄いと思うわ。あれだけの邪悪で狡猾な暗部組織を完璧にまとめあげている、あなたの手腕。本当に見事。
51話 あなたのところの掃除部隊って、本当に有能よね。素直に、凄いと思うわ。あれだけの邪悪で狡猾な暗部組織を完璧にまとめあげている、あなたの手腕。本当に見事。
「B男と快適な結婚生活を送るために、一人目の旦那……資産家のジジイ『A男』を騙して結婚した。殺して、遺産を奪うための……ビジネスとしての婚姻」
「だましてはいないわ。向こうが求婚してきただけ。それで死んだだけよ」
「俺の前で嘘はつかないでいいよ。分かっているだろ? 俺は君より悪人だし、君を裁くつもりも、脅すつもりもない。ただ、気になったから聞いているだけ。内輪のお喋りで、無駄な嘘をつかれるのは、不愉快だな」
と、『断罪するような目』を送ると、
ケバい美女は、一度、ビクっと体を震わせて、
「わ、わかっているわよ。別に、あなたに嘘なんてつく気はないわ。向こうが求婚してきたのは本当だもの。ただ、求婚してきた男たちの中で、一番殺しやすそうなのを選んだのは事実だけど。……一番、世間知らずそうで、一番お人よしっぽかったから選んだわ」
「A男のことは、かなり、計画的に、綿密に、絶対にバレないように慎重に殺しているね。ウチの組織も、いくつか利用しているっぽいし」
「あなたのところの掃除部隊って、本当に有能よね。素直に、凄いと思うわ。あれだけの邪悪で狡猾な暗部組織を完璧にまとめあげている、あなたの手腕。本当に見事」
「無駄に誉めなくていいよ。君に褒められても、何とも思わないから」
「それ、本気で言っているわね……あなたって、ほんと、不愉快」
そう言いながら、ケバい美女は、テーブルの上のペットボトルに手を伸ばす。
軽く喉を潤している彼女に、
蝉原は、
「君は、A男から巻き上げた金で、B男と幸せに生きていくつもりだった……と予想するんだけど、その辺、どうだい?」
「正解。彼のことは愛していたわ。顔が良くて高身長だったから。アタマはパーだったけど」
「B男が死んだのは、本当に事故?」
「ええ。事故よ。『死んでほしい』とは思っていたし、『いつか殺したい』と考えていたけど……手は下していない。ほんとうに、たまたま、偶然、死んでくれた。だから、嬉しかったわぁ」
「死んでくれて嬉しい、か。……愛していたんじゃないのかい?」
「愛していたけど、一緒に生活していたら、だんだんムカついてきたのよね。ご飯を食べるときの音が汚いのよ。あと、時間を重ねるたびに、顔が少しずつ汚くなっていったし……生え際も、だんだん後退していたしね。見た目の良さが薄れたら、あの男にいいところなんて何もないわ。背が高いのも、眺める分にはいいけれど、一緒に生活していると、鬱陶しいことが多いし。でかいと邪魔なのよ、色々。食費もかさむしね」
「……だろうねぇ」
「……『死んでほしい』・『いつか殺したい』と思っていたけど、本気で殺そうとは思ってなかったわ。だって、殺したってメリットが少ないもの。本音の本音で言えば……どこかのタイミングで、捨ててやろうと思っていただけ」




