49話 どいつもこいつも、病院案件とはこれいかに。相対的な視点だと、まともなのは俺だけか。……相対的に俺がまとも?! 終わってるな。
49話 どいつもこいつも、病院案件とはこれいかに。相対的な視点だと、まともなのは俺だけか。……相対的に俺がまとも?! 終わってるな。
「キチ〇イも、そこまで行けば大したもんだと、俺を賛美し、喝采を送ってくれ」
センのマシンガン戯言を、いなせにいなしながら、輝木は、
「私は、やはり、あなたの側にいないとダメみたいですねぇ。前からそうだとは思っていましたがぁ……事実、そうだったという、シンプルな話だったみたいですぅ」
「何を言っているのか、さっぱり分からん。どうやら、混乱している様子。どいつもこいつも、病院案件とはこれいかに。相対的な視点だと、まともなのは俺だけか。……相対的に俺がまとも?! 終わってるな。すげぇ現場だぜ。世界中探し回っても、これほどの地獄はそうないだろう」
どうにか、話の流れを、自分の望む方向にもっていこうと奮闘するセンエース。
しかし、センの努力など、彼女たちの前では何の意味もない。
センのお喋りは、『ないもの』として処理することが、
脳内でシステマティック化された様子の輝木。
輝木は、チラと、ウルアに視線を向けて、
「あなたは邪魔なので、今後、関わってこないでくださいねぇ。もう、分かったと思いますけどぉ、あなた程度がどうこうできる余地はないんですよぉ」
と、ゴリゴリに女のマウントを取ってくる輝木に、
ウルアは、平然と、泰然と、超然と、
昼下がりのコーヒーブレイクと何ら変わらない平穏な顔で、
「そうでもないと思いますよ。というより……私の視点だと、あなたは、リードしているわけでも、有利な立場に立っているわけでもないと思います。私とあなたは五分五分。むしろ、私の方がポジションとしては上でしょう。あなたは、ただ同情されているだけ……というのが、私の感想ですね」
そんな、とげとげしいウルアの発言に対し、
センは、呑気に、
「いや、輝木の方が戦力としては、間違いなく上だろ。あんた、宇宙人との殺しあいの場では、別に、何ができるわけでもねぇし。……仮に、輝木の『約束神化と殺戮神化』を、『プラマイゼロ』ととらえたとしても、輝木は、刃物の扱いが妙にうまいから――」
と、そんな、ズレ散らかした戯言をのたまうセンのことを、フル無視して、
輝木も、ウルアも、ばちばちの目で睨み合う。
★
――とある高級ホテルのペントハウススイートで、
蝉原は、ケバい美女を抱いていた。
その女は、体だけは豊満だが、性根の腐った顔をしていた。
抱き終わったあと、蝉原は、
大きな窓の外に広がっている夜景を見つめながら、
(ついには、『いい女』だけではなく、『クズ女』相手でも……何も感じなくなったか……ガキのころは、相手がゴミだと、多少は興奮できたものだが……)
などと、心の中でつぶやきつつ、
軽くため息をついた。
『このクズをどうやって殺してやろうか』と考えながら抱く行為に対し、昔は、それなりに欲情できた。
だが、今は『無』だった。
何も感じない。
何一つとして、感情が揺るがない。




