48話 俺はただ、あいつに憧れただけだ。誰だって若いころは、カリスマとか、ヤンキーとか、そういう『レールの外側にあるもの』に焦がれるもの。
48話 俺はただ、あいつに憧れただけだ。誰だって若いころは、カリスマとか、ヤンキーとか、そういう『レールの外側にあるもの』に焦がれるもの。
「宇宙人だの、神だの、魔法だの、魂だけ銃に乗り移るだの……これだけ、何でもありのトンデモキテレツ摩訶不思議アドベンチャーが巻き起こってんだから、探せば、ドラゴ〇ボールも見つかって、死んだ連中を全員生き返らせることもでき……なくはないだろうぜ。絶対ではないけどな」
「……」
「そして、なんだかんだで、蝉原が蘇ったら、あとは、あいつを300人委員会の理事長にでも据え置いて、この世界における『飢餓だの疫病だの戦争だの差別だの貧富の格差だの』……そういう厄介事を終わらせてもらえばいい。あいつなら出来るさ。俺には無理だが」
「蝉原勇吾を……随分と、信頼しているようですね。あの人は……確かに有能だと思いますが、根っからの悪人です。それは間違いない。だから、信用や信頼はしない方がよろしいかと思うのですが……」
「あいつを信用したことも、信頼したこともねぇよ。俺はただ、あいつに憧れただけだ。誰だって若いころは、カリスマとか、ヤンキーとか、そういう『レールの外側にあるもの』に焦がれるもの。そんな『異質』の両方を『高い精度』で持ち合わせているあいつに憧れるのは、中高生の必然。それだけの話だよ。最初から最後まで」
「あなた様の御考えは理解しました。しかし、承知はいたしかねます。世界の頂点にふさわしいのは、高次の高潔さと気品と優しさを併せ持つ清廉な御方だけ。つまりは、あなた様だけの特等席」
「俺に気品を見出すとは……節穴も、そこまでいくと、芸術的だぜ。どうやら、あんたのイカれた目を通すと、ウンコが花に見えるらしい。……そうなると、もう、ただの病気な気がするが、しかし、だからこそ、俺はもう何も言わないぜ。精神病患者に必要なのは、正論なんかじゃなく、適切な治療だからな。あとはもう、医者に丸投げさせてもらう。お大事に」
と、諦観の意志を示すセン。
すると、そこで、
「ん……」
輝木が目を覚まして、
ゆっくりと、上半身を起こす。
そして、眼球だけで、キョロキョロっと周囲を確認する。
ボンヤリとしていた意識が、
センの顔を見たことで、くっきりと覚醒していく。
「……また、助けてもらっちゃいましたねぇ。いつも、ありがとうございますぅ」
と、とろけたような笑顔で、そう言った。
そんな彼女に、センは、
「人は一人で勝手に助かるだけだって、どっかのバッチャが言ってた。事実、俺はお前を助けてねぇ。お前は、お前に勝っただけ。そんなお前の前で、俺は、空気読めない園児みたいにヒーローごっこをしていただけだ。ヤバいな、俺。キチ〇イも、そこまで行けば大したもんだと、俺を賛美し、喝采を送ってくれ」
センのマシンガン戯言を、
いなせにいなしながら、輝木は、
「私は、やはり、あなたの側にいないとダメみたいですねぇ。前からそうだとは思っていましたがぁ……事実、そうだったという、シンプルな話だったみたいですぅ」




