43話 やっぱ、名前がいるよな……そうじゃないと……心躍らないし、だから、アンコールもわかない。それじゃダメだ。もっと堕ちていかねぇと……もっと、ダサく……
本日の2話目です。
43話 やっぱ、名前がいるよな……そうじゃないと……心躍らないし、だから、アンコールもわかない。それじゃダメだ。もっと堕ちていかねぇと……もっと、ダサく……
「無理すんな、輝木。お前の暴走ごときじゃ、俺は死なねぇ。俺が死ぬのは、俺が俺であることを諦めた時だけだ。俺が何を言っているかわかるか? 俺にはさっぱりわからない。俺は一生、雰囲気でしか口を開いていない。酷いな、俺。だから、モテないんだよ」
と、ぶっ飛んだ戯言で、世界をケムにまいてから、
センは、
「毘沙門天……命令だ……今度こそ、ちゃんと聞け」
右手に魔力とオーラを、ぶち込んでいく。
命全部を燃やす覚悟を、右手にブチ込める。
「輝木を取り戻せないなら、俺は自殺する。俺が死んでいいのか? よくないよな。俺が死んだら、俺が絶滅するもんなぁ。それは、お互いにとって、ちょっとだけ不利益だもんなぁ。……だったらよぉ……」
ギュンギュンに、膨れ上がっていく。
命を削る覚悟。
魂を燃料にして、命を加速させる暴挙。
「よこせ、全部。……シャレでもテンプレでもねぇ……俺を殺す覚悟をよこせ」
ギギギギギギギギギギギギギギギギッ!
と、錆びた車輪で急ブレーキをかけた時みたいに、
耳障り地獄の爆音が、センの心の奥底でけたたましく騒ぐ。
毘沙門天に、体を預ける。
全部をゆだねる。
下手すれば死ぬ……分かりやすい大問題を前に、センは嗤う。
「やっぱ、名前がいるよな……そうじゃないと……心躍らないし、だから、アンコールもわかない。それじゃダメだ。もっと堕ちていかねぇと……もっと、ダサく……もっと滑稽に……」
グツグツと煮えたぎる。
何が茹だっているのかは分からない。
わからないままでいい。
正確な答えを求めても、小さくまとまってしまうだけだから。
「悪鬼羅刹は表裏一体。俺は独り、無限地獄に立ち尽くす」
拙い言葉の羅列を、自分の中に刻んでいく。
「どこまでも光を求めてさまよう旅人。ここは幾億の夜を越えて辿り着いた場所」
そのポエムに、意味はねぇ。
理由も価値もエビデンスもない。
データなんかねぇよ。
あるわけねぇだろ。
ナメんなよ。
「さあ、詠おう。詠おうじゃないか。喝采はいらない。賛美も不要」
それでも、叫び続ける理由を、最後の最後まで自分自身に問い続ける。
これは、そんな覚悟の証。
「俺は、ただ、絶望を裂く一振りの剣であればいい」
グっと強く拳を握りしめる。
心と体が、無駄に洗練された無駄のない無駄な流儀で一致していく。
「俺はセンエース。孤高の狂気を背負い舞う閃光!!」
意味のないコールで、自分をきらめかせてから、
センは、
「――絶華・逆気閃拳っっ!!!!!」
渾身の一撃を、輝木の腹部に叩き込む。
ギニリ、グニャリと、輝木の全部が、
龍の巣みたいな、地獄の嵐になっていく。
「う、ぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」




