42話 二回目のチャレンジは、多少、うまくできた。最初からうまくできることは少ないが、繰り返し練習すると、比較的確実に上達できるのが、センエースの特質の一つ。
今日と明日は、遅くなる可能性があるので、
朝に2話、投稿します。
本日の1話目です。
42話 二回目のチャレンジは、多少、うまくできた。最初からうまくできることは少ないが、繰り返し練習すると、比較的確実に上達できるのが、センエースの特質の一つ。
センは、毘沙門天を自身の周囲に展開させつつ、
「もし、お前が……その期に及んでまだ、自分自身の弱さに抗い続けるというのであれば……」
ゆっくりと、思う限りの武を構えて、
「……今日だけは……お前だけのヒーローになってやる」
その宣言を耳にすると同時、
輝木は、天を仰ぎ、
「ぐっはぁああああああああああっっ!」
と、大量の血を、噴水みたいに吐きだした。
『食い過ぎたあとの嘔吐』みたいな感じで、
妙にすっきりした顔の輝木が、
天を仰いだまま、
「センイチバン……」
『あえて読み方を間違えているセンの名前』を口にしてから、
「私を……殺して……」
そう嘆願した。
それを受けて、センは、
ニっと、力強く笑い、
「……ヒーロー見参……」
悠然と、覚悟を口にした。
と、同時、
センは毘沙門天を背負ったまま飛び出す。
姿勢を低くしたまま、
輝木の懐に飛び込むと、
「安心しろ、輝木。てめぇは死なねぇ。この場で死ぬ可能性があるのは、俺だけだ。なぜかって? 坊やだからさ」
と、軽くファントムで場を濁しつつ、
輝木の腹部めがけて、
「こんな感じで……どうだろな、っと……」
輝木の中身を捻転させるイメージの拳をぶちこんでいく。
「……っ」
センの拳を腹部で受け止めた輝木は、
一瞬だけ、ピクっと体を動かしたものの、
特に、それ以上の何かを感じている様子はない。
「イメージはあっている気がするんだよなぁ……グルっと、体内のエネルギーを回転させて、吐き出させるイメージ……なんで、こんなイメージが頭に浮かぶのかは謎だけどねぇ。んー……マジで、なんでだろ……ま、どうでもいいけど」
などと言いながら、
センは、再度、輝木の腹部に、
輝木の内部をグルっと回転させるイメージの拳を叩き込む。
「うぷっ」
二回目のチャレンジは、初回チャレンジよりも、多少、うまくできた。
最初からうまくできることは少ないが、繰り返し練習すると、比較的確実に上達できるのが、センエースの特質の一つ。
ただ、ちょっとうまい事いったせいか、
『ここまで二回ほど、黙って殴られてくれた輝木』が、
「がぁあああっ!!」
と、トチ狂った感じで、
センに向かって攻撃を仕掛けてきた。
センは、反射的に、
「ドリームオーラ・オメガバスティオンっ!!」
キャンセル技で、暴走輝木の攻撃を無効化していく。
「――殺す殺す殺す殺す――」
と、また、完璧に自我を失った様子で、
暴れそうになる……が、
「ブェエエエエエッ!」
またもや、大量の血を吐いて、
「はぁ……はぁ……うぃいいい」
自分自身の暴挙を、必死になって食い止めようとしている様子の輝木。
そんな彼女の、だいぶ憔悴してきた様子を尻目に、センは、
「無理すんな、輝木。お前の暴走ごときじゃ、俺は死なねぇ。俺が死ぬのは、俺が俺であることを諦めた時だけだ。俺が何を言っているかわかるか? 俺にはさっぱりわからない。俺は一生、雰囲気でしか口を開いていない。酷いな、俺。だから、モテないんだよ」




