38話 この女はダメ。見た目が良すぎる。男を見る目もある。その上で、品格があって、アカコーだから頭もいい。ゆ、許せない。高性能すぎる。
38話 この女はダメ。見た目が良すぎる。男を見る目もある。その上で、品格があって、アカコーだから頭もいい。ゆ、許せない。高性能すぎる。
これまで、ずっと、抑え込んでいた衝動。ハンパない精神力で、生まれてから今日までの十数年、ほぼ完璧といっていいレベルで制御してきたのに、金戸ウルアに対しては、これまでに守り続けてきたタガが、冗談やシャレではなく、ガチで、はずれようとしている。
「ふぅ……ふぅ……ふぅ……ふぅ……」
なんとか、深呼吸を繰り返して、
自分の中で暴れている衝動を抑え込もうとしている輝木。
その怒涛の勢いは、薬物中毒者の禁断症状さながら。
「まずい……まずいぃ……ガチで殺してしまう。……このままだと、私、マジで、この女を殺す……」
「あ、あの……ど、どうしました? ご気分でも――」
「ウルサイ、ウルサイ、ウルサイ……殺す殺す殺す……この女はダメ……見た目が良すぎる……男を見る目もある……センイチバンの良さなんて、普通、わかるワケないのに。私だけで良かったのにぃ。……こいつ、その上で、品格があって、アカコーだから頭もいい……ゆ、許せない。高性能すぎる。……この、クソおんな、ゴミ女、カスメスブタ……クソクソクソ――」
バチギレ、暴走寸前の輝木。
ちなみに、そんな彼女の視線の先では、
今も、センが、
「ぎゃひゃひゃひゃ! どうだ! 辛いか! 苦しいか! いいぞ、もっと泣け! 貴様の悲鳴だけが俺に、生の実感をくれる! どうした、悲鳴がたりないぞ!」
と、絶賛、高潔ムーブ中!
あまりにも高潔すぎて、高潔という概念そのものがゲシュタルト崩壊中。
現場は、とにかく、全方位にカオス。
歪みに歪みが重なって、謎の特異点になっている、センさんの母校。
輝木は、高潔が暴走しているセンを指さしながら、
「あ……あんなヤバい男と結婚なんて……しない方がいいですよぉ。あの男はほんとに……なんというか……色々と、ダメなところばっかりですからねぇ。言動とか……あと、顔とか……ひどいものでしょぉ? あなたみたいな美人は……もっと、見た目のいい男を選ぶべきですよぉ。……そ、そうだ……私が紹介してあげますよぉ。蝉原勇吾っていう、ハイスペックなイケメンがいるんでぇ、その男と、よろしくやればいいと思いますよぉ。あの男は、いい男ですよぉ……手下とかも一杯いるしぃ……地位も名誉も金も、全部手に入れられるでしょうしぃ……」
「蝉原勇吾……たぶん、オーナーのことですね。あんな珍しい名前の人、他にそうそういないでしょうから……」
と、そう言ってから、
「あの人のことは……確かに、凄い人だと思います。今まで、多くの、ハイスペ男性を見てきましたが、間違いなく3本の指に入る色男。……ただ、私、悪人は嫌いでして……生理的に、絶対にムリなんですよ」
「センイチバンもだいぶ、ヤバイでしょぉ。悪人といって差し支えないと思いますよぉ……ほら、見てくださいよぉ。宇宙人の臓物で遊んでますよぉ……やばいでしょぉ」




