32話 『宇宙人は倒す』『俺も生き返らせる』……『両方』やらなくっちゃあならないってのが『英雄』のつらいところだな。覚悟はいいか? 君はできてる。
32話 『宇宙人は倒す』『俺も生き返らせる』……『両方』やらなくっちゃあならないってのが『英雄』のつらいところだな。覚悟はいいか? 君はできてる。
「なんで、そろそろ、宇宙人がやってくるっていう、最悪の状況で、さらに、こんなクソみたいな面倒事を抱えないといけないんだ……」
蝉原デスガンをベッドの上に置いて、
両手で頭を抱えてしゃがみこむセン。
そんなセンに、蝉原デスガンが、
「絶望するのも覚悟の上だ。『宇宙人は倒す』『俺も生き返らせる』……『両方』やらなくっちゃあならないってのが『英雄』のつらいところだな。覚悟はいいか? 君はできてる」
「俺の覚悟を勝手に決めんな」
★
その後、なんだかんだ、色々とあったが、
結局のところ、久剣は、戦線を離脱することになった。
話し合いの中、蝉原デスガンがチャチャをいれたり、
久剣が、無駄に強い責任感をむき出しにしてきたり、
多少、モメはしたものの、
最終的には、
『参戦したって邪魔になるだけ。利点がない。庇わないといけない分、普通に足手まとい』
という、真っ当な意見を前にして、
折れるしかなかった。
実際のところ、またウムル級の宇宙人が来た場合、
今の久剣がいても、メリットが一つもない。
そのことを理解した久剣は、
『戦いが終わったら、ちゃんと報告して』
と言い残して、家路についた。
センは、久剣だけではなく、輝木も家に帰したがったが、
『私の場合、いざとなったら、変身できる可能性があるので、戦力になりえますぅ』
と、頑なに言い張るので、避難させることができなかった。
センは、だいぶ必死に、イカつい言葉の暴力を駆使しつつ、
なんとか、輝木を避難させようとしたが、
何を言っても、輝木には通じない。
『あなたを一人にさせるぐらいなら、この場で死にますよぉ』
と、メンヘラ大爆発な脅しをかけてきたので、
『俺の前で、簡単に自殺できると思うな。死よりも恐ろしい究極のパワーを見せつけた上で、ジワジワと嬲り殺しにしてくれる』
と脅しつけても、
『死んだら魂になって、あなたの剣翼に宿りますよぉ』
などと、イカれたことを抜かしてきやがったため、
流石のセンも、折れるほかなかった。
そんなこんなで、戦場には、二人と一丁。
セン、輝木、蝉原デスガンの3名は、
夜の学校で、静かに、宇宙人の登場を待つ。
そんな中、空中に、エアウィンドウが出現する。
そこに映し出された、ゲームマスター『ショデソウ』が、
「イベントの発生を宣告する。――宇宙人との戦闘前に、ランダムで、『イベント』が発生する可能性がある。今回のランダムイベントの内容は、新たなメンバーの追加。こちらがテキトーに選択した人間が、君たちの仲間となる」
そう言ったのを聞いて、センは、
「……どわぁ……いらねぇ……この状況で、新人、いらねぇ……めちゃくちゃ足手まとい……ただのお荷物……」
頭を抱えて深いため息をついていると、
そこで、空にビビっと亀裂が入った。
そして、その亀裂から、フワっと、人が落ちて来る。




