31話 デスガンがしゃべりだすとか、そんなことはありえない。今さっきのは、蝉原を失ってしまったことによる俺の深い喪失感が見せた幻だ。
31話 デスガンがしゃべりだすとか、そんなことはありえない。今さっきのは、蝉原を失ってしまったことによる俺の深い喪失感が見せた幻だ。
「……ちっ……痛みないんかい。徹底的に、ボッコボコにしてやろうと思ったのに。火をつけたり、冷凍庫に放置したりして」
「ははは。ありえなさ過ぎて笑っちゃったよ。仮に、今の俺に感覚神経があった場合、君は、赤ちゃんぐらい大事に、俺を扱うだろうね。『無抵抗の人間に暴行できる素養』なんて、全宇宙一高潔な君の中には存在しえない」
「……銃口をふさいでも、しゃべり続けることができるのか……うざすぎる……」
蝉原のお喋りがウザすぎたセンは、
どうにか、黙らせようと、
『蝉原が喋っている間、ずっとキモく動いている銃口』を、
ギュっと握りしめてみたが、
しかし、銃口をふさいだら、
トリガーの部分が動き出して、おしゃべりを継続する。
『おそらく、どこをふさいでも、どこかしらが動いて喋るのだろう』
とそう理解したセンは、タメ息交じりに、
蝉原デスガンを、保健室の奥にある掃除ロッカーの中に封印して、
「よし、今のは、なかったことにしよう」
パンと、一度両手を叩いて、
一件落着の締めをぶちかます。
「デスガンがしゃべりだすとか、そんなことはありえない。今さっきのは、蝉原を失ってしまったことによる俺の深い喪失感が見せた幻だ。というわけで、話を続けよう。……久剣、邪魔なだけで、役立たずのお前は、今すぐ――」
「どうやら、俺は、センくんの所有物として、正式に認定されたらしいよ。結果、キング〇ムハーツのキーブ〇ードみたいに、どこにいても、君のもとに舞い戻ることができるようになったらしい。やったね、センちゃん。家族が増えたよ」
先ほど、掃除ロッカーに封印したはずの蝉原デスガンが、
気づけば、センの手元に戻ってきていた。
……センは、『自分がいつの間にか握りしめていた蝉原デスガン』を見下ろしつつ、
「え……キツくない? これ、普通に……」
と、絶望した顔で、
「俺、今後、お前と一生、一緒にいる感じ? ウソだろ? 吐きそうなんだけど。ゲロ吐きかけていい? いいよね? だってお前が原因だもんね?」
「一生ではないと思うよ。俺が生き返ることができたら、普通に解放されると思う。おまけに、龍牙峰たちも生き返る。それは、君にとって、万々歳の結果だろう」
「……お前が生き返ったら、デスガンから解放されるって部分に関しては、もちろんそうだろうけど……後者の部分は、あなたの感想ですよね?」
「感想じゃなくて、妄想だね」
「……」
「で、どうする、センくん。俺を生き返らせるために頑張る? それとも、俺と一生一緒にいてくれる? 俺としては、後者でも別にいいよ。むしろ、そっちの方がいいかもね」
「なんで、そろそろ、宇宙人がやってくるっていう、最悪の状況で、さらに、こんなクソみたいな面倒事を抱えないといけないんだ……」
蝉原デスガンをベッドの上に置いて、
両手で頭を抱えてしゃがみこむセン。




