30話 ガキなんか、全員、まとめて、一緒くたに絶望させておけばいいんだ。そうすりゃ、ファミレスや電車で騒ぐガキがいなくなって快適になる。
30話 ガキなんか、全員、まとめて、一緒くたに絶望させておけばいいんだ。そうすりゃ、ファミレスや電車で騒ぐガキがいなくなって快適になる。
「龍牙峰たちの魂を俺が両手で抱えている、みたいな感じ。……あくまでも、そんな気がするってだけの話だけれどね」
「……『気がする』ねぇ。そこまで、とことんあやふやになられると、こっちとしても、なんも言えねぇなぁ……」
「あくまでも感覚だけの話だけれど、それでもよければ、続けて聞いてくれ。多分、俺の中には、龍牙峰たちの魂がしまい込まれている。で、もし、俺が、生き返ることができた場合、龍牙峰たちも生き返ることができる……ような気がする。多分。きっと。おそらく。感覚的には」
「根拠はゼロで、あくまでも、感覚的に、そう思いますって?」
「うんっ(笑)」
「だいぶ、ふざけた話だが……そう思っておいた方が、色々と、希望はあるか。もっとも、現状、お前らが生き返るかどうかって、あんまり関係ねぇけど。さっき、久剣が言ったように、お前らがいたところで、ウムル級の宇宙人が相手だと、なんも出来んだろうから」
「おいおい、センくん。世界一のヒーローが、そんな事を言っちゃいけないなぁ。ヒーローが、そんなことを言ったら、全国のちびっこたちががっかりしてしまう」
「ガキなんか、全員、まとめて、一緒くたに絶望させておけばいいんだ。そうすりゃ、ファミレスや電車で騒ぐガキがいなくなって快適になる」
「久剣を鉄火場から避難させるために、悪役スイッチが入っているから、通常時より、だいぶ辛辣な言葉がポンポンと無限に飛び出てくるねぇ。君のその、徹底した『高潔さ』には、いつも、舌をまくばかりだよ」
そこで、蝉原は、意識の矛先をセンから久剣に変えて、
「久剣、流石にもうわかっていると思うけれど、さっきのセンくんの発言は、君をどうにか、この場から避難させようとした優しさのたまもの。『たいしてスペックは高くないものの、責任感だけは無駄に強い君』を、これ以上、宇宙人との闘いに巻き込まないために、センくんは、いつも通り、悪役を買って出た。美しいと思わないかい? いつだって、センくんは、誰かを助けるためなら、自分の――」
蝉原が最後まで言い切る前に、センは、蝉原デスガンを、
思いっきり、ベッドの枕に向けて投げつけた。
「すまんな、蝉原。手が滑ってしまった。痛くなかったか? おー、よちよち、かわいそうに」
「もちろん、痛くもかゆくもないよ、センくん。ぶつかったのが枕だったからじゃないよ。意識はあるけれど、痛覚とかはないからね」
「……ちっ……痛みないんかい。徹底的に、ボッコボコにしてやろうと思ったのに。火をつけたり、冷凍庫に放置したりして」
「ははは。ありえなさ過ぎて笑っちゃったよ。仮に、今の俺に感覚神経があった場合、君は、赤ちゃんぐらい大事に、俺を扱うだろうね。『無抵抗の人間に暴行できる素養』なんて、全宇宙一高潔な君の中には存在しえない」




