29話 余計なことをのたまう蝉原がいなくなって、自由になれた気がしたセン。
29話 余計なことをのたまう蝉原がいなくなって、自由になれた気がしたセン。
「つぅわけで、てめぇは首だ。その汚い面を、二度と、俺の前に見せるな、メスブタ」
そう言い切ったセンは、天を仰ぎながら、
(決まった……完璧だ。エグゼクティブリーダーの蝉原が死んだことは、マジでウザくて仕方ねぇが、こういう時に、余計な邪魔されなくなったことは、普通にありがてぇ。もし、あいつが、この場にいたら、また、わけのわからん嫌がらせのチャチャを入れてきただろうが……死んでしまっては、それも、もうできない。ここからは自由に、思うままにやらせてもらう)
などと、心の中で思っていると、
そこで、
「――流石、センくんだねぇ。どんな時でも徹底して、弱者を慮る、その稀有な精神性。君以上の英雄が他にいるだろうか。いや、いない」
などと、聞き馴染みのある声が響いた。
センは、
「え、蝉原?!」
反射的に、周囲を見渡す。
だが、どこにも、蝉原の姿はない。
「ここだよ、センくん。下を見てくれ」
声の指示に従い、目線を下げてみる。
保健室の床には、久剣が回収した『蝉原たちの武器』が転がっている。
その中の一つ……『蝉原が所持していたデスガン』の、
銃口の部分が、口のように動いており、
「どうやら、俺の魂は、このデスガンに宿ってしまったようだ。びっくりだよね」
「びっくりっていうか……え……どういうこと? お前、生きてんの?」
そう言いながら、センは、『お喋りデスガン』を拾う。
「いや、死んでいると思うよ。少なくとも、肉体は死んでしまっている。……そうだろう、久剣? 君は、俺の死体を処理しているから、そこのところは確認しているはずだ」
その問いに対し、久剣は、
「……確認もクソも……上半身がぶっ飛んでいるんだから、生きているわけがない。触った時、冷たくなっているのは確認したけど。……少なくとも、人の体温はなかった……」
「そう。俺は死んだ。……けど、どういう訳か、魂だけは死なずに、このデスガンに残った。意識があるだけで、別に何もできないけどね。自分で動くこともできないよ。今の俺は、ただ、おしゃべりができるってだけのデスガン。特に価値があるとは思えないけれど、できれは、ぞんざいには扱わないでほしいな。さっきからずっと言っている通り、俺の意識は普通にあるからね」
そこで、センが、蝉原デスガンに、
「……意識が宿っているのはお前だけか? それとも、他の連中の魂も、『それぞれがもっていた武器』に宿っている感じ?」
「いや、宿っていないと思うよ」
「なぜ、そんなことが言える?」
「あくまでも、感覚だけの話になるけれど、龍牙峰たちの魂は、『俺の中』にある……気がする」
「中にある? どういうこと?」
「龍牙峰たちの魂を、俺が両手で抱えている、みたいな感じ。……あくまでも、そんな気がするってだけの話だけれどね」
「……『気がする』ねぇ。そこまで、とことんあやふやになられると、こっちとしても、なんも言えねぇなぁ……」




