28話 仮に、龍牙峰たちが生きていたとしても、ウムルクラスの化物が相手だと、何の役にも立たないから、昨日と今日で、戦力的に変化がない。
28話 仮に、龍牙峰たちが生きていたとしても、ウムルクラスの化物が相手だと、何の役にも立たないから、昨日と今日で、戦力的に変化がない。
「つぅか、輝木さんよぉ……俺が言うのもなんだが……現状は、そんな、しょぼいボケではっちゃけてる場合じゃねぇぞ。チームのリーダーとメイン戦力が死んでんだ。おそろしく悲惨な状況……今は、『この状況をどうにかする必要性』と真摯に向き合おうぜ」
「もともと、私は、あなたのことをリーダーかつメイン戦力だと思っていましたのでぇ、昨日と今日で、現状は、そんなに変化がありませんねぇ」
「……『全員が生きていた昨日』と、『蝉原・龍牙峰・百目鬼・高橋の4人が死んだ今日』で、変化がないって? とんでもねぇサイコ発言かましているっていう自覚ある? さすがの俺でもドン引きだ。俺がドン引きしているという大問題を、正しく認識しろよ。マジで、だいぶやべぇぞ」
と、そこで、久剣が、
「……仮に、龍牙峰たちが生きていたとしても、ウムルクラスの化物が相手だと、何の役にも立たないから、『昨日と今日で、戦力的に変化がない』という輝木の認識は、ある意味で真っ当だと思う」
そんな言葉を口にした。
続けて、久剣は、センの目を見て、
「閃壱番。……現状、あなただけが頼り。『昨日までの蝉原』みたいに、冗談で、あなたのことを持ち上げているのではなく……本当に、あなたが、対宇宙人の切り札。もっといえば、あなただけが戦力。あなただけに全てを押し付けるのはどうかと思うから、一応、私も戦場に出向くけれど……ウムルみたいな、異次元の化け物相手だと、私にできることは何もない。せめて、アイテムが買えるのであれば……私も、剣翼を買うなり、携帯ドラゴンを買うなりして、戦力になれたかもしれないけど……」
と、うつむき加減で、力なく、ボソボソと、己のふがいなさを口にする。
そんな彼女を尻目に、
センは、軽く天を仰いで、
「……ふむ……」
と、いったん、頭の中で、言葉を整えると、
「久剣さんよぉ……まったく、てめぇは、ほんと、糞の役にも立たない女だな。死んだ方がマシと断言できるレベル。ゲロ以下のタン」
と、急に、辛辣な言葉で、彼女を罵っていくセン。
急に罵倒されて、普通に気圧されている久剣に、
センは、続けて、
「てめぇみたいなカス以下の女に、まわりをウロチョロされるだけでも、神経が溶けてしまうのが、俺の悪い癖。『ゴミを許容できる度量が俺にあれば良かったのに』などと思うことすらないから、精神安定的には問題ないけどな」
と、思いつく限りのラリった悪態をついてから、
センは、
「つぅわけで、てめぇは首だ。このチーム蝉原に無能はいらない。その汚い面を、二度と、俺の前に見せるな、メスブタ」
そう言い切ったセンは、
天を仰ぎながら、
(決まった……完璧だ)
自分自身のムーブに対して、
自分自身で惚れ惚れしながら、
心の中で、
(エグゼクティブリーダーの蝉原が死んだことは、マジでウザくて仕方ねぇが、こういう時に、余計な邪魔されなくなったことは、普通にありがてぇ)




