21話 ムーンビーストは、ウムルDを召喚するための生贄。ウムルDの髪の毛のフケや爪の垢みたいなもの。敵の髪や爪を切るだけではポイントにはならない。
21話 ムーンビーストは、ウムルDを召喚するための生贄。ウムルDの髪の毛のフケや爪の垢みたいなもの。敵の髪や爪を切るだけではポイントにはならない。
――久剣は、気絶しているセンと輝木を、一旦、保健室に運んでから、ベッドに横たわらせると、脳内でアイテム一覧を確認し、『魔法の薬草』を購入し、センに使用しようとしたのだが、
「……あれ……買えない……なんで……」
いつもと同じ手順で、アイテムを買おうとしたのだが、まるで、『ネットワークが遮断されたパソコン』みたいに、エラー反応が出るばかり。
アイテム一覧を確認することすらままならない。
――と、そこで、空中に、エアウィンドウが出現し、
映し出されたショデソウが、
「……ウムルDを撃退してみせるとは恐れ入った。見事だ」
と、いつもに増して、AI的・機械的に、淡々とそう言う。
まるで、やる気のないアナウンサーが、カンペでも読み上げているみたいに、
まったく感情なく、
「ウムルDは、一時撤退しただけで、倒せたわけではないため、ポイントは入らないが、あれほどの強大な宇宙人を、一時的にも退けてみせたというのは、驚嘆に値する」
そのセリフを受けて、
久剣が、愕然とした顔で、
「ポイント……入らないの……? え、ゼロ? あれだけ苦労して?」
苦労したのはセンであって、今回、久剣は何もしていない……が、
どれだけ頑張って、センがウムルDを撃退したのかは、
一応、把握しているため、明確に不満をもらす。
そんな彼女の不満に対し、
ショデソウは、相も変わらず、
淡々とした、機械的リズムで、
「ああ、もちろん。倒せてはいないからな」
「最初のムーンビーストは? あれは、倒したんじゃ……」
「あのカスタム・ムーンビーストは、ウムルDを召喚するための生贄……つまり、ウムルDの付属品。ウムルDの髪の毛のフケや爪の垢……みたいなものと考えてくれていい。敵の髪や爪を切るだけではポイントにはならない。あくまでも、ポイントは討伐報酬。……ウムルDを倒せていない以上、ポイントは入らない」
「……」
「それと、もう一つ報告があるが、現在、アイテムショップのメンテナンス中であるため、アイテムの購入はできない。メンテがあけるまで、しばらくお待ちください」
「……メンテ……だから、買えなかったの? ……そ、それは、いつあけるの? せめて、薬草だけでも――」
「質問は許可しない。貴様らは、ただゲームに参加するだけ。クリアできれば生き残ることができるが、失敗すれば死ぬ。それだけだ」
と、機械的に、お決まりのセリフを繰り返すショデソウに対し、
久剣は、ギリっと奥歯をかみしめ、かるく血走った目で睨みつけ、
「質問にはこたえなくていいから! 薬草だけでも買わせろ! このままだと、閃が死ぬ!!」
と、悲鳴のような激昂を吠える。
バチギレの睨みを受けていながら、
しかし、ショデソウは、
どこ吹く風を一貫し、
「現在、アイテムショップのメンテナンス中であるため、アイテムの購入はできない。メンテがあけるまで、しばらくお待ちください」




