20話 ソルDは『とてつもない性能を誇る、第一アルファ人の薬宮シリーズ』を奪い取り、コアデータを書き換えて、トリックスターの器にしようとした……で、失敗した。
20話 ソルDは『とてつもない性能を誇る、第一アルファ人の薬宮シリーズ』を奪い取り、コアデータを書き換えて、トリックスターの器にしようとした……で、失敗した。
「薬宮シリーズの因子は、狂愛のアリア・ギアスによって、重たい呪いをもっているけれど、その代わり、『全体的なスペックが底上げされる』という特質を持つ。運命の相手を『必ず』見つけ出すためには、低スペックだと、色々困るんだよ。薬宮シリーズが、総じて、優秀な能力を持つのはそのため。第一アルファ人の薬宮シリーズである『輝木』の肉体は、とんでもなく優れている」
『薬宮シリーズの因子』を持つ者は、大概、地獄を経験する。
地獄みたいに差別が蔓延した世界に産み落とされたり、
存在するだけで、意図せず世界中の生命体を呪い殺してしまったり。
「ソルDは『とてつもない性能を誇る、第一アルファ人の薬宮シリーズ』を奪い取り、コアデータを書き換えて、トリックスターの器にしようとした……で、失敗した。どのように失敗したかは、ご覧の有様」
「……」
黙って話を聞いているショデヒを尻目に、
蝉原は、頭の中で、
(狂愛のアリア・ギアスは間違いなく発動しているし、輝木は、センエースの影響を強く受けているから、いずれ、トリックスターの因子をねじ伏せて、『本来の器に戻る』のは明白。……現状の問題は、『その時』が、『もっと先になる』と思っていたこと……いや、別に問題でもないけどね。輝木が薬宮シリーズとして覚醒しようと、しなかろうと、俺の計画に支障はない。『バーチャの資質を持ち合わせた、第一アルファ人の薬宮シリーズ』というのは、間違いなく脅威だが……プライマルヒロインズの対応策はガチガチに用意してあるからね)
頭の中で、そこまで考えると、
蝉原は、ショデヒに、
「さて……ショデヒ。さっき俺は、君の願い通り、センくんを倒すのに協力した。倒せはしなかったが、しかし、約束通り、協力はした。というわけで、俺の配下になってもらうよ」
「……っ」
「そっちの方が、君としても楽だろう? 君は『マスター』の器じゃない。俺の下で、プレイヤーをやっている方がお似合いだし、本来の資質で輝ける。誰にだって適正というものがあって、君は、王の器じゃない。俺は別に支配者になりたいとは思っていないけど、その器はもっている」
「……」
その静かな沈黙を、素直な肯定として受け止めた蝉原は、
ニコっとさわやかに微笑んで、
「さっそくだけど、仕事をしてもらおうか。ここから先、一言一句、一挙手一投足、俺の言うとおりにやってくれ。まずは――」
★
――久剣は、気絶しているセンと輝木を、一旦、保健室に運んでから、
ベッドに横たわらせると、
脳内でアイテム一覧を確認し、『魔法の薬草』を購入し、
センに使用しようとしたのだが、
「……あれ……買えない……なんで……」
いつもと同じ手順で、アイテムを買おうとしたのだが、
まるで、『ネットワークが遮断されたパソコン』みたいに、エラー反応が出るばかり。




