18話 久剣は、意識障害がおこっている様子だが、『自分が魔法で動けなくなっていたこと』と『蝉原たちが殺されてしまったこと』ぐらいは、理解できている。
18話 久剣は、意識障害がおこっている様子だが、『自分が魔法で動けなくなっていたこと』と『蝉原たちが殺されてしまったこと』ぐらいは、理解できている。
深く息を吸ったセンは、ギラリと目を光らせて、毘沙門天の剣翼を、右手に集結させ、巨大な一本の剣として握りしめると、
「羅刹・轟羅・終息一閃!!!」
肉体が、意識と心を置き去りにして――自由に飛び跳ねる。
シュインッ、
と、繊細な音が空間を虜にしていく。
気づいた時……全てのウムルDがサイコロステーキに変わっていた。
一瞬で、バラバラになったウムルD。
その肉片の中の一つ……
コアと思しき『黒い球』が、
最後に一度、ギラァっと色濃く光って……
……そのまま、世界にスゥっと溶けていった。
黒い玉が消えると、バラバラで地に落ちていたウムルDたちの肉片も、夏場のアスファルトに落ちた氷みたいに、スゥっと爆速で解けて消えてなくなる。
『ウムルDの全部が、この世からなくなった』のを確認するよりも、
コンマ数秒はやく、輝木の『約束神化』がスンっと解かれた。
そして、そのまま失う意識。
センは、倒れる輝木を抱きとめて、
「……もう……何がなんだか……さっぱり、わからん。……いい加減にしてほしいぜ……色々」
最後にそう言うと、
輝木を、地面に優しく、横たわらせてから、
――『ウムルDが消えたと同時に明白な意識を取り戻した様子の久剣』に、
「悪いけど……あとのこと……任せた……俺は、もう……なんもできん……」
全てを託して、深い眠りについた。
ウムルDが消えるまでの久剣は、半分、眠っているような状態だったが、ギリギリ、意識は残っていたようで、詳細の理解は当然していないものの、この場で何があったかは、一応、なんとか把握できている。
(センエース……あんな化け物を退けるなんて……すごいな……)
久剣は、現状、軽く意識障害・記憶障害がおこっていて、まあまあ強めの頭痛を患っている様子だが、
『自分が魔法で動けなくなっていたこと』と『その間に、センが敵を倒したこと』と、『蝉原たちが殺されてしまったこと』ぐらいは、理解できている。
しばらくは、その場で、色々考えつつ、たたずんではいたものの、
最終的には、死んだ面々の装備品を回収し、爆散している死体を地面に埋める。
『魔法のバールのようなもの』を使えば、硬い地面が、プリンのようにスルスルと掘れた。
埋葬が終わると、久剣は、『天輪』を装着し、センと輝木の二人をかついで、
いったん、校舎の中……保健室のベッドまで飛んだ。
★
――認知の領域外で、
でかいエアウィンドウに表示されている『久剣の様子』を観察している、
『蝉原勇吾』とショデヒの二人。
久剣が、黙々と、後処理をしている様子を尻目に、
蝉原が、心の中で、
(……輝木の封印が、一瞬だけ解けたな。……いらない奇跡だね。……別に、輝木がどうこうしなくても、センくんなら、輝木を守りきることはできた……)




