17話 約束。
17話 約束。
「くるなら……来いやぁ……」
と、イカれた覚悟を示すセンに向かって、数百を超えるウムルDの群れが一斉に襲い掛かった。白目をむいたウムルDは、意識のようなものがないように見えた。
感情も思想も精気もなく、命を捨てるかのような特攻を見せる。
……この状況、普通の精神力なら、間違いなく折れるだろうが、
センは、
「ドリィイムオォラァアア!! オメガバスティオォオオオオオオオオオオオオオオオン!!!」
どこからそのエネルギーを持ってきているのか分からないが、
とにもかくにも、強烈な全方位バリアを大量展開して、
『白目をむいたウムルD』の特攻に対応していくセン。
――センが、『大量のウムルDの猛攻』を防ぐのに必死になっているスキをつき、
その中の一体が、
こそこそと、センの死角から飛び出し、
……『いまだ後方で動けずにいる輝木』めがけて、
凶悪な火力の異次元砲をぶっ放した。
その様子を、感覚で察知し、視界の隅にとらえたセンは、
「今の俺を殺す前にぃいいいい! 輝木を殺せるわけねぇからぁあああああ!!」
そう叫びながら、
剣翼の力をフル稼働させ、
一瞬で距離をつめると、
輝木の盾をするように、オメガバスティオンを展開させていく。
――そんなセンエースの行動全部を、完璧に読み切っていたかのように、
センの影に潜んでいたウムルDが、
ギュンッと、機械的なリズムで飛び出して、
輝木の頭部めがけて、シンプルな拳を突き出した。
旧カンスト級の数値を誇る神の一撃に、輝木が耐えきれるはずがない。
――『輝木の死』の気配を、過敏に感じ取ったセンは、
永遠に近い一瞬の中で、さらに、もう一段階、頭のおかしい沸騰を見せる。
「ずぉぁあああああああああああああああああああああああああああ!!」
ちぎれるほどに、全身をひねり上げ、
物理法則にジャーマンを決め込む不条理さで、
輝木とウムルDの間にねじ入ると、
そのまま、自分の肉体を盾にして、輝木を守ろうとする。
すべてはコンマ一瞬の出来事。
『人間の感覚』では『知覚するのもやっと』の一寸。
そんな、細切れに刻み込まれた時間の中で、
輝木は、『センエースの死』の気配を感じとる。
さっきと真逆。
『輝木の死を感じ取って盾になろうとしたセンの死』――を過敏に、反射的に、感覚的に、無意識下の中で感じ取った輝木は、
『人間では処理できない一瞬』の片隅で、
「……約束……神化……」
輝木の中で沸騰する命の螺旋。
たどり着いた生命の暴挙。
輝木の全部が膨張していく。
『現世で神を縛る鎖』すらもブチ破って、
輝木は、『センの奥底』へ、
『常闇』よりも深い『命の輝き』を流し込む。
ドドドドドドドドッっと、センの中で無数の煌めきが逆流していく。
「ぷはぁっ!」
深く息を吸ったセンは、
ギラリと目を光らせて、
毘沙門天の剣翼を、右手に集結させ、巨大な一本の剣として握りしめると、
「羅刹・轟羅・終息一閃!!!」
肉体が、意識と心を置き去りにして、
――自由に飛び跳ねる。




