16話 このままだと、『センくんの成長』が一切ないまま終わってしまいそうだから、とりあえず、出来ることは全部やっておこうか。
16話 このままだと、『センくんの成長』が一切ないまま終わってしまいそうだから、とりあえず、出来ることは全部やっておこうか。
(なかなか、性能の高い心をもっているね、ショデヒ。正解だ。『バーチャルディメンション中で、センエースを殺せる可能性が最も高いタイミング』は、『今、この瞬間』だろう。だが、それは『相対的に一番マシ』ってだけの話。……正確な査定を下した場合、現状はチャンスでもなんでもない)
「蝉原勇吾、力を貸してくれ! センエースを殺すのに協力してくれたら……貴様の配下になってやる!」
(どっちみち、最終的には、他の『ヴィランサイド連中』同様、強制的に、ショデヒも俺の中に回収するつもりだから、その頼みを聞く意味はないんだけど……このままだと、『センくんの成長』が一切ないまま終わってしまいそうだからねぇ……とりあえず、出来ることは全部やっておこうか)
★
ウムルDの猛攻を、センは完璧に防ぎ切った。
息も絶え絶え、全身ボロボロの状態でありながら、
センは、それでも、ずっと、ウムルをにらみつけている。
ここまでくると、ウムルDも理解できている――『このまま、ずっと、永遠に攻撃し続けたとしても、この変態は、無限に無効化し続けるだろう』ということが。
「こ、この、キチ〇イめぇ……」
心底辟易した声で、そう呟いた……直後のことだった。
ウムルDの身体が、
「っ?! うぷっ……」
急に、プクーっと、『ケツから空気を注入したカエル』みたいに、キモく膨らんでいく。
「な、なにが?! う、うぁあああああああっっ!」
そのまま、普通に耐えきれず、パァンっと、弾け飛ぶウムルDの体。
高次の神の肉体は海のようなもの……と言っていたにも関わらず、その奥深さ・膨大さなどは一切感じることのない、惨めな死にざま。
急に弾け飛んだウムルDを見て、
センは、頭上にハテナを浮かべ、
「ど、どういう状況? はぁ?」
と、首をかしげていると、
バラバラに弾け飛んだウムルDの肉体が、
グニョグニョと動き出す。
そして、バラバラになった肉片が……グググっと膨張していき、
肉片の一つ一つが、ウムルDと同じサイズになると、
ギュギュギュっとシルエットが構築され、
コンマ数秒で、『数百を超える、白目をむいたウムルDの集団』となった。
大量の『白目をむいているウムルD』にギロっと睨まれたセン。
完全白目で、目玉の位置は不明だが……睨まれていることだけはよくわかった。
センは、
「……ドラゴ〇ボールの映画で……見たことある光景だな……泣けてくるぜ……」
と、泣きそうな声で、そうつぶやきつつ、
「すぅ……はぁ……」
ボロボロの身体にムチをうち、どうにか深呼吸して、自分の魂を整える。
……ばっきばきに血走った目で、
「くるなら……来いやぁ……」
と、イカれた覚悟を示すセンに向かって、
数百を超えるウムルDの群れが一斉に襲い掛かった。
白目をむいたウムルDは、意識のようなものがないように見えた。
感情も思想も精気もなく、命を捨てるかのような特攻を見せる。




