15話 この状況下における俺の目的は、『センくんと、一人の人間として、深い対話すること』と、『悪寄りの第一アルファ人を回収しておくこと』だから……俺の目的は既に達成している。
15話 この状況下における俺の目的は、『センくんと、一人の人間として、深い対話すること』と、『悪寄りの第一アルファ人を回収しておくこと』だから……俺の目的は既に達成している。
(――『覚醒していない第一アルファ』でオメガ・ニャルを出しても……まあ、普通に無理だろうなぁ。……ショデヒのバーチャルディメンションじゃ、『オメガ・ニャル』を完全開放することすら出来ないだろうし。……俺がいくら手を貸しても、ショデヒがゴミすぎて、どうしようもないな。……ショデヒに創れる絶望は、センくんからすれば、『ハナクソほじるぐらいの難易度』でしかない)
蝉原が、眉間にシワをよせて、頭をぽりぽりとかいている間、
ショデヒは、センのキモさに震えているばかり。
蝉原は、何度か、大きなタメ息をついて、
(……『輝木トト詠』を『生贄』として使えば、オメガ・ニャルを完全解放することはできるだろうけど、それは最悪手中の最悪手。そんなことをしたら、センくん大覚醒で、手に負えなくなって、俺的に、完璧ゲームオーバー。状況、詰んでるなぁ……)
今、この瞬間に、オメガ・ニャルを召喚する手段はいくつかある。
だが、そのどれもが、誰の目にも明らかな最悪手。
つまりは、俯瞰視点だと、完全に詰んでいる。
(まあ、別にいいけど。この状況下における俺の目的は、『センくんと、一人の人間として、深い対話すること』と、『悪寄りの第一アルファ人を回収しておくこと』だから……俺の目的は既に達成している)
と、心の中で状況を整理している蝉原に、
ショデヒが、
「蝉原勇吾! どうにかできないか?! お前ほどの悪魔なら、どうにかできるんじゃないのか?!」
まだまだ、ショデヒは、蝉原を『信用』していないが、
しかし、蝉原は優秀なので、
『何かにすがりつきたくなった時』には、つい、もたれかかってしまう。
そうさせてしまう資質も、蝉原が持つカリスマの一つ。
踏み込んだことを言うならば、センも、蝉原の、そんなカリスマにあてられている。
「……一応、今、俺と君は、『センくんがウムルに勝てるかどうか』という賭けをしている途中なんだけど? そんな状況で、君が俺に協力を求めるっていうのは、いかがなものなんだろうね?」
「殺せるんだ! 普通に考えて! この状況なら絶対に殺せるはずなんだよ! ウムルDの存在値は『17兆』で、センエースの存在値は『702』だぞ!! ウムルDが勝てないわけないんだ!」
「そうだね。普通に考えたら絶対に負けるわけがないね」
「もし、この状況をセンエースが切り抜けてしまったら……この先、どんなアウターゴッドを出そうが、勝てない気がする! ここしかない気がするんだ! センエースを殺せるチャンスはここしかないと、私の心が叫んでいる!」
(なかなか、性能の高い心をもっているね、ショデヒ。正解だ。『バーチャルディメンション中で、センエースを殺せる可能性が最も高いタイミング』は、『今、この瞬間』だろう。だが、それは『相対的に一番マシ』ってだけの話。……正確な査定を下した場合、現状はチャンスでもなんでもない)




