13話 例えるなら、集合体恐怖症の患者が、『壁一面、様々な集合体の写真で埋め尽くした部屋』に放り込まれた時のような心境。
13話 例えるなら、集合体恐怖症の患者が、『壁一面、様々な集合体の写真で埋め尽くした部屋』に放り込まれた時のような心境。
「オメガぁあああ! バスティオンっっ!!」
しゃべることさえできそうにない、グチャグチャの状態にも関わらず、センは、喉を刻んで、腹から声を出す。叫べば使える技……というわけじゃない。脳と体に、さらなる大きな負担が、ズガンとのしかかる。
心と体の全部がバラバラに爆散してしまいそう。
「ぐひぃ……がっ……あぁっ……」
胸をかきむしり、多量の血を吐くセン。
『死んでいないのがおかしい』というレベルの悲惨な状態。
それでも、センは、イカれた目で、
ウムルDをにらみつけ、
「ぜぇ……ひぃ……はぁ……」
言葉を口にする気力は残っていない様子……だというのに、
その眼力は、明確に『抗う意志』を示していた。
心身の状態を鑑みるに、もはや、指一本動かす抵抗すら、できるはずがないのに、
しかし、センは、眼力だけで『何度でも消してやる』と叫んでみせる。
ウムルDは、身震いした。
命の恐怖などは感じていない。
例えるなら、集合体恐怖症の患者が、『壁一面、様々な集合体の写真で埋め尽くした部屋』に放り込まれた時のような心境……
とにかく気持ち悪くて仕方がない。
「うぉおおお! いい加減、死ねぇえええ! 異次元砲ぉおおおお!!」
ウムルDは、『この一発は消されてもいい』……と思いながら、異次元砲を放った。
予想通り、センは、
「オメガバスティオン!!」
当然のように、異次元砲を無効化してきた。
しかし、そうなるだろうと予想していたウムルDは、
センが、異次元砲を無効化した直後、
「連続煉獄魔弾ランク1000!!」
数十を超える大量の魔弾を放出するという魔法を放った。
魔弾のサイズは、石粒ぐらいで、小さいが、
センの今の肉体だと、かすっただけでも爆散してしまうレベル。
全てを消し去らないと死んでしまう……そして、盾役の自分が死んだら、後ろにいる二人も死ぬ……そして、世界も終わる……
――それが明確に理解できたセンの頭が、限界を超えて沸騰する。
まるで、『限界なんて存在しない』と叫んでいるみたいに。
――センは、『毘沙門天の剣翼』に刻まれている神字の効果を理解していない。
しかし、極限状態で沸騰した脳が、封じられた記憶の海から、可能性のカケラをムリヤリ引きずり出して、
「ドリームオーラァアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!! オメガバスティオォオオオオオオオオン!!!!!」
毘沙門天に刻まれた神字を強制稼働させた結果、
『数十を超える数のドリームオーラ・オメガバスティオン』を同時展開させることに成功。
信じられないことに、
『肉体的には、ただのパンピーでしかないセン』が、
異常レベルの魔法を使って、
アウターゴッドの猛攻を防ぎ切ってしまった。
「ぶびぃいい……げへぇえ……」
白目をむいて、その場に倒れこみ、
止まらない鼻血で出血死しそうなセン。
そんなセンを見下ろしながら、
ウムルDは、
「びょ……病気……っ」




