12話 ありえないが、もし、仮に、ここから2~3回連続でオメガバスティオンを成功させたとして……だから? それで、ウムルDに勝てるのか?
12話 ありえないが、もし、仮に、ここから2~3回連続でオメガバスティオンを成功させたとして……だから? それで、ウムルDに勝てるのか?
ニタニタと笑っている蝉原を尻目に、
――ショデヒは、
「あれだけ消耗を強いられるスキルを、連発してみせた、というのは、素直に驚嘆する……が、だからどうした? 仮に、まだ使えたとして……だから、なんだ? センエースが敗北する未来に変わりはない」
断言した上で、続けて、
「ありえないが、もし、仮に、ここから2~3回連続でオメガバスティオンを成功させたとして……だから? それで、ウムルDに勝てるのか? 勝てないだろう? 無駄に頑張って、寿命を数秒伸ばすだけ。それだけだろうが」
「ウムルDの召喚には、かなりのコストを払ったが、アリア・ギアスが足りない現状だと、完全な召喚は不可能。……ウムルDをこの世界にとどめておけるのは、あと5分が限界だろう。……つまり、5分耐えられたら……無駄な頑張りではなくなる」
★
二発目の異次元砲を無効化されたウムルDは、
『満身創痍のセン』を見つめながら、
「私の異次元砲を消失させてみせたのは、『数兆年に一回の偶然・マグレ・奇跡』ではなく……『再現性のある技』だったのか……驚かされたな。貴様ごときの力で、私の異次元砲を無効化するとは……そもそも、無属性かつ貫通属性の異次元砲を消滅させるというのが異常。……ふむ……素晴らしい。……心の底から認めよう。だが……それだけの技をノーコストで使うことはできまい。見れば分かる。心も体も限界がきているだろう? もう意識を保つことさえやっとだろう?」
その問いに、センは、
『一瞬でも気を抜けば気絶しそうな心身』にムチを打って、
「そうでもねぇよ……」
と、全力で強がってみせる。
「ふふ、そうか。そうでもないか。なるほど……では、もう一度、やってみるがいい。異次元砲」
3回目の異次元砲。
死の瞬きで一杯になるセンの視界。
もう、頭も心も腕も足も、
まったく自由に動かない状態……にも拘わらず、
センは、
「オメガ……バスティオン……」
ウムルDの異次元砲を、両手でグニャリと変形させて、
そのまま、バシュっと消失させてみせた。
「ぜぇ……はぁ……ひぃ……ひぃ……」
『心臓に疾患を抱えている者が、フラッシュ暗算しながら鉄人レースを走り切った時』……とでも表現したくなるような疲労困憊ぶり。
ガクっと片膝をついて、
今にも死にそうな蒼白の顔で、
必死に酸素を体に取りこもうと必死。
そんなボロボロのセンを見下ろしながら、
ウムルDは、
「………………異次元砲」
特に前口上は述べず、とりあえず、踏みつぶそうと、
先ほどよりも魔力を多めに込めた異次元砲を放つ。
「オメガぁあああ! バスティオンっっ!!」
しゃべることさえできそうにない、グチャグチャの状態にも関わらず、
センは、喉を刻んで、腹から声を出す。
叫べば使える技……というわけじゃない。
脳と体に、さらなる大きな負担が、ズガンとのしかかる。




